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再稼働申請6原発 30キロ圏自治体の避難計画・・「未策定」52%/川内はゼロ

13-09-03itiran原発事故が起きたとき、住民をどう避難させるのか―。住民避難のあり方などを定めた「地域防災計画」の重要なポイントとなる避難計画について、再稼働の申請があった6原発で調べたところ、避難の対象となる約52%の市町村でできていないことが明らかになりました。(丹田智之)
調査は8月16日までに電話による聞き取りで行いました。対象は、再稼働に向けた申請をした4電力(北海道、関西、四国、九州)6原発の30キロ圏内に位置する10道府県の52市町村です。そのうち避難計画ができていないのは、「作成中」と回答した市町村を含め、半数を上回る27の市町村でした。

特に、鹿児島県の九州電力川内原発の全自治体と、四国電力伊方原発のある愛媛県の全自治体で避難計画ができていません。(表参照)

また、避難先の確保については、「協議中」と答えた市町村を含め、約21%の11市町村が「未定」と回答しました。避難手段や避難ルートについて聞いたところ、交通渋滞を心配する声や避難手段の確保ができていない、複数の避難ルートがないなど、さまざまな問題点を指摘する自治体が少なくありませんでした。

一方、「策定済み」と回答した市町村でも、入院患者や高齢者を中心とする移動弱者の数を把握していない実態も示されました。

規制委は“丸投げ”

原子力規制委員会の田中俊一委員長は「地域住民に対する防災の責任は各市町村長と知事にある」と述べ、避難計画について、自治体“丸投げ”の無責任な姿勢です。原発再稼働の条件とも切り離す考えです。

穴だらけ原発避難計・・避難計画の有無と避難先について、原発ごとに見てみると・・。

泊・・避難先には車で3時間

泊原発の30キロ圏内に位置する市町村のうち、5町1村で避難計画ができていません。泊原発が立地する泊村では、避難路が海岸沿いの国道のみで、避難先も未定です。

同村に隣接する岩内町では、避難先を約100キロ先の札幌市にしています。同町では、自家用車やバスで少なくとも3時間を要すると試算しています。

山あいの赤井川村では、村内のリゾート施設「キロロリゾート」を避難先として指定しています。しかし、「スキーシーズンなど、多客期には対応できない場合も考えられる」(担当者)と懸念を示しました。

計画をつくったという道内のある自治体の担当者は、「まだまだ不十分な点も数多くありますが、とりあえず作ったということです」と本音を漏らしました。

大飯・高浜・・バス2千台確保できず

福井県嶺南地方のおおい町、小浜市、高浜町、若狭町、美浜町では、避難計画ができていません。県外への避難については、兵庫県の自治体などと協議中で、県内の避難先しか決まっていません。避難ルートとされる幹線道路はいずれも1本しかありません。

避難計画、避難先ともに決定している京都府舞鶴市は、市民約9万人を避難させる計画です。担当者は、「交通渋滞が考えられるので、バスで避難してもらうことにしましたが、そのために必要な2000台を確保できていません」といいます。

京丹波町の担当者も、「移動弱者の問題など、懸念されることを挙げればきりがありません」といいます。

伊方・・使用できる港は1カ所

避難対象となる愛媛県内5市2町の全てで避難計画ができていません。いずれの自治体も、「県の広域避難計画をベースに判断する」といいます。

伊方原発は佐多岬半島の付け根にあたる場所に立地しています。伊方町では、半島部に住む町民約5300人が大型の船舶で対岸の大分県側に避難する計画です。地震や津波などの複合災害も考えられますが、担当者は、「(避難の際に)使用できる港は1カ所しかありません」といいます。

原発の西側に位置する八幡浜市も、「避難に必要なバスの台数などを調査中」(担当者)と回答しました。

13-09-03hinan玄海・・避難1300人 船定員150人

7市1町で避難計画、避難先ともに決定されています。しかし、その多くは避難に要する時間などのシミュレーション(模擬計算)ができていません。

原発から20キロ圏内にある長崎県平戸市の大島では、約1300人の避難対象者に対し、使用するフェリーの定員は150人。担当者は、「定員以上の人を乗せて避難させれば、法令違反になります。緊急時に定員増を認めるよう、政府に求めています」と説明しました。

川内・・避難計画まだ決まらず

鹿児島県内7市2町の全てで避難計画ができていません。うち4市2町では避難先も決まっていません。

熊本県との県境に位置する出水市の大半が原発から30キロ圏内に入ります。担当者は、「熊本県側に避難する計画ですが、現時点で熊本県から避難先についての回答はありません」と答えました。

避難先が決定している日置市では、避難人口を2万7千人と想定。現時点で1万2千人の避難先が決まっていません。

検証もないまま

避難計画は、住民の安全と健康を守るための重要な要素です。

計画をつくるのはもちろん、実効性ある計画かどうかも検証されないまま、原発再稼働を進めることは許されません。

数十万人の同時避難は不可能
・・福島県楢葉町から避難中の住職・早川篤雄さん(原発問題福島県民連絡会代表委員)の話

2年前の3月11日、私は福島県楢葉町の自宅から、着の身着のまま避難しました。テレビも携帯電話も使えず、原発に関する情報も全く入らない状況で、頭の中が真っ白になりました。あの日、入院患者や寝たきりのお年寄りが一般の住民と同じバスに乗せられ、100キロ近い距離を移動させられました。避難先で亡くなられた方もたくさんいました。そうした福島の経験からも、数十万の人々を同時に避難させることなどできません。原発はただちにやめるべきです。

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