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「放射能汚染地図」3年・・藤久ミネ

3年前、福島の原発事故発生4日後から、記者が現地取材に当たり、5月に放送されたETV特集「ネットワークでつくる放射能汚染地図」を覚えておられるだろうか。

現地で正確な線量を計り、被災者の実態を具体的に記録したこの番組は大きな反響を呼び、再々放送までされたことは記憶に新しい。正統的続報ともいうべきETV特集「原発事故から3年」が3月8日に放送された。

前作同様、放射線測定の第一人者岡野興治氏が同道。「線量は多少下がってはいるものの、3年を一区切りと安心はせず、地道な観測を続けるしかない」と語る。取材記者たちは、浪江町や飯舘村ほかの地域で3年前に出会った人たちを、一人ひとり本当に丹念に尋ねて、多くのケーススタディーを提示している。

5万羽の鶏を失ったシベリア帰りの養鶏業者は廃業。転居後、亡くなった。赤宇木の自宅に戻って、柳刃包丁を腹に刺し抗議の自死を遂げた人もいる。神経異常に苛まれる女性。除染実験のために田植えをし、収穫米を処分させられる篤農家は、百姓一揆を起こしたい心境だと語った。農業後継者になると決めた若者は、50歳までの間、田畑にソーラーパネルを敷きつめる企業との契約に不安を感じている。牧畜業や水産業も、岩手大学や海洋生物環境研究所の調査結果を待つほかない。

甲状腺検査を受けた小学生の息子ともども、札幌に移住した夫妻は、子どもたちに「被ばく者であることを受容して堂々と生きてほしい」と語りきかせていた。

福島市のように比較的線量の低い地域でも、「さくら幼稚園」のように独自にあらゆる除染手段を駆使し、毎日の食料すべてを計測して自衛する園長の姿が記録されていた。京都からはるばる福島へ来て、それを見守る安斎育郎氏(立命館大学名誉教授)の控え目な支援も感動的だ。

今後、国と自治体とが計画的かつ徹底的調査を重ね、迅速・適切な対策を実行しない限り、福島の人々はそれぞれが情報を収集し、英知をしぼって放射能に向き合うほかない生活を余儀なくされる。世界有数の地震国に誰が50基をこえる原発をつくってしまったのか。それを私たち一人ひとりも深く自省せねばなるまい。(ふじひさ・みね 放送評論家)

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