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加速する原発輸出(下)・・高すぎる賠償のリスク

国家財政脅かす

実際に進められている原発輸出の案件も問題だらけです。

三菱重工が受注をめざすヨルダンヘの原発建設について「環境・持続社会」研究センターの田辺有輝氏は2011年8月24日、衆院外務委で数多くの問題を指摘しました。

▽ヨルダンは地震国の上、建設予定地は世界有数の乾燥地であり、給水できない事態が生じた場合どうするのか。
▽立地予定地の15キロ圏内に人口80万人の都市が、40キロ圏内には人口120万人の首都アンマンがある。
▽テロの恐れがある。
▽事故が起きれば国家財政に致命的な影響を与える。
▽使用済み燃料はどうするのか。
▽太陽熱・風力発電など代替エネルギーは十分ある・・・。

国際原子力機関(IAEA)の予測でも原発建設が進むのはほとんどが途上国です。原発事故が国家財政に与える影響は多くの国に共通しています。福島原発の損害費用は、少なすぎると批判されている原子力委員会の試算でも6・9兆円。そこには除染や将来の健康被害の費用は含まれていません。ヨルダンの国民総所得(GNI)は約2・5兆円にすぎず、ひとたび過酷事故が起これば国家財政が破たんすることにもなりかねません。

これから建設される原発は、設計寿命60年を使い切ることがコスト換算の前提となっています。もし60年の間に再生可能エネルギーをはじめエネルギー分野で飛躍的な技術革新が起こり、安価で安定的な代替エネルギーがでてくれば、原発はその国の経済の足を引っ張るお荷物になります。太陽光発電のシステム価格は、1993年から2011年の間に7分の1に低下しました。60年という時間の長さを考えれば、技術革新が起こる可能性は十分にあります。

テロの標的にも

テロの標的になる危険もあります。原子力情報コンサルタントの佐藤暁氏は、「ある国際的カウンターテロのデータベース」の情報として、1970~99年の間に原発を標的としたテロ事件が167件報告されているとしています(『科学』13年5月号)。「9・11テロ」の計画立案者が原発を標的の一つに入れていた事例や、チェチェン共和国のテロリストが5機の飛行機をハイジャックして原発への攻撃を計画していた事例もあります。

原発輸出をめぐる競争が激しくなるなかリスクが増大しているとの指摘もあります。韓国は、アラブ首長国連邦の原発建設を競合国の3~4割も安く受注したといわれています。同じく原発輸出に力を入れるロシアは、使用済み核燃料の引き取りがセールスポイントです。日本が原発輸出を進めれば、韓国やロシアと同等かそれ以上のリスクをとるよう迫られかねません。

輸出先で原発事故が起これば、損害賠償の責任は日本にも及ぶ可能性があります。政府は「日本企業が自らの判断で海外での原発事業に参画することをもって、日本政府が賠償にかかる財務負担を負うものではない」(茂木敏充経産相、13年5月28日、衆院本会議)としていますが、国策として原発を輸出しておいてこんな言い分は通用しません。

一刻も早く、「安全神話」にしがみついて原発輸出に固執するのはやめ、福島原発事故の収束と被災地の復興、全原発廃炉へと力を振り向けるべきです。
(おわり)

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