東京電力は9月4日、福島第1原発(福島県大熊町、双葉町)のタンクで高い放射線量が測定されている問題で、「H3エリア」にあるタンク北側で1時間当たり2200ミリシーベルトを検出したと発表しました。漏えい発覚以来、汚染水タンクのあちこちで次つぎと異常が見つかっていることは、これまでの東電の管理体制のずさんさを浮き彫りにしています。
当該のタンクでは1日、同1700ミリシーベルトが検出されていましたが、3日に周辺の線量を測り直したところ、同2200ミリシーベルトという過去最大の値が検出されました。
8月19日に「H4」エリアにあるタンクから300トンの汚染水の流出が発覚して以後、東電はタンクのパトロール態勢を強化。その結果、漏えいタンクと合わせて7基のタンクで高い放射線量が測定されています。「H5エリア」のタンクでは、新たに漏えいが1カ所見つかりました。
漏えいしたとみられる大量の放射能汚染水が、どこへ流出したのかは依然わかっていません。タンク群のそばを通る排水溝から外洋へ直接流出した可能性や、地面に染み込んだ汚染水が地下水を汚染した可能性が考えられていますが、東電はまったく把握できていません。
外洋への流出の可能性をめぐっては、汚染水が排水溝に流れ込んだ形跡が見つかっています。タンクのそばを通るB排水溝の水を採取して分析した結果、タンクの上流側に比べて下流側で、ストロンチウム90などベータ線を出す放射性物質(全ベータ)が高濃度で検出されており、外洋へ流れ込んだ可能性が指摘されています。
一方、地下水の汚染については、タンク群の下流側にある地下水井戸の水のトリチウム濃度が、今年2、3月に分析した値に比べると、2倍から10倍以上に高くなっており、これが汚染水の地下水への混入を示している可能性も否定できません。
このほか、タンク群の上流側でも高い汚染が確認されています。2日に、B排水溝のタンクより上流側の、タンク群とは距離のある地点で、1リットル当たり380ベクレルの全ベータが検出されました。翌3日には同67ベクレルに下がっていましたが、なぜ上昇したのかについて東電は、「さらにデータを集めた上で評価したい」と話しています。
汚染水ベータ線の影響は
放射能汚染水タンク群で、相次いで高い放射線量が検出されています。東京電力によると、今回検出された最大の放射線量は、ほとんどがベータ線によるもので、1時間当たり2200ミリシーベルトでした。漏れた汚染水がベータ線を放射するストロンチウム90を多く含んでいるためです。
ベータ線は、セシウムなどが放射するガンマ線と比べれば透過力は弱いものの、汚染水に触れたり近づいたときなどの局所被ばくが心配されます。外部被ばくに限れば、目の水晶体や皮膚など体表面に近い部分が影響を受け、放射線白内障やベータ線熱傷(やけど)などを発症する可能性があります。
もし、ベータ線を出す物質を体内に取り込んでしまえば、その周辺の臓器への影響が心配されます。ストロンチウムは骨に蓄積されやすく、長期間の内部被ばくによって骨がんなどの原因となることが心配されます。
作業者の水晶体と皮膚の被ばく限度(等価線量限度)は、それぞれ年間150ミリシーベルト、同500ミリシーベルトと法令で定められていますが、今回検出された最大の放射線量だと、この値にわずか4分強、14分弱で達することを示しています。
周辺での作業では、ベータ線をきっちり遮へいして、目や皮膚などを保護することが求められます。