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汚染水 政府基本方針 技術的裏付け・現実性保障なし・・原発推進、破たん明白

東電福島第1原発の汚染水漏れ問題に関する政府の基本方針は、5月以来開かれていなかった政府の汚染水処理対策委員会が8月8日にようやく再開した際、付け焼き刃的に慌てて出してきた「緊急対策」「抜本対策」を焼き直しただけのものです。国際原子力事象評価尺度(INES)で「レベル3」と認定された非常事態にもかかわらず、小手先の対応は変わっていません。原発汚染水問題が4月に相次いで発覚して以来、東電任せにしてきた政府の無責任さのつけがあらわれた形です。

海洋放出明記

重大なのは、地下水を原子炉建屋の山側でくみ上げて海洋放出する計画を明記していることです。いったん地下水をくみ上げ始めれば、山側の水位が低下し、原子炉建屋側の高濃度汚染水が地下水に逆流する可能性もあります。山側の上流にあるタンクから漏れた高濃度放射能汚染水が土壌にしみ込んだことが指摘されており、すでに地下水が汚染されている恐れもあります。

ところが同方針は、地下水の海洋放出について「関係者の理解を得るよう最大限努力する」などとしているだけで、逆に汚染拡大への漁業者など地元の危惧を増大させるものとなっています。

基本方針は、凍土遮水壁で原子炉建屋への地下水流入を防ぎ、現在の多核種除去設備(ALPS)に代わる高性能の多核種除去設備を開発することなどを、あたかも実現可能であるかのようにうたっています。凍土遮水壁については2014年度中、高性能多核種除去設備については2014年中の運用開始を見込んでいるといいます。

しかし、同会議の直後に原子力規制庁内で開かれた会見では、記者団から「技術的裏づけがあるのか」などの疑問の声が続出。経産省資源エネルギー庁の新川達也原子力発電所事故収束対応室長でさえ「技術的説明は難しい」「リスクはある」「トリチウムの除去は非常に難しい」などの説明に終始。総額470億円という巨額の国費投入の効果さえ疑わしい計画にすぎないことがあらわになりました。

いま、地上タンクからの高濃度放射能汚染水の流出事故という非常事態にどう対処するのかが直面する最重大課題となっていますが、同方針は鋼板をボルトでつないだだけの「フランジ型」地上タンクを、より汚染水漏れリスクが低い溶接型タンクにすべて置換する時期さえ定めていません。

塩川氏が指摘

地上タンクの耐用年数は10年間とされていますが、ボルトで鋼板を締め付けて挟んでいるゴムパッキンの耐用年数は5年しかなく、相次ぐ水漏れの発生に「総点検が必要だ」と日本共産党の塩川鉄也衆院議員が4月に国会で指摘していました。その指摘を軽視し、タンクを放置してきたことが、今回の非常事態を招いているのです。今回の方針も、タンクの汚染水漏れという非常事態の″抜本対策″などとは到底呼べません。

技術的裏づけも実現性の保証もない計画を並べただけの同方針は、逆に放射能汚染水問題解決の難しさと、原発推進政策そのものの明らかな破綻を示しています。(林信誠)

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