東日本大震災被災者のための仮設住宅には、今も岩手、宮城、福島3県で計10万4000人ほどが暮らします。災害救助法で定める、仮設住宅の入居期限は原則2年。自宅の再建や災害公営住宅の建設は遅れており、国は入居期間を4年間延長するなど、仮設暮らしは長期化を強いられています。
床下に水たまり
″仮住まい″を前提として大半がプレハブ作りの仮設住宅は、入居開始当初から劣悪な設備と環境が問題になっていました。さらに長期化するなかで仮設住宅には、すでに「老朽化」ともいうべき劣化が起きるなど、新たな問題が次つぎと発生し、被災者は心身ともに限界の状態です。
「布団を1日敷きっぱなしにすると、カビ臭くなる。ここは床の鉄板1枚へだてて、すぐ地面だから」
こう話すのは、宮城県多賀城市の山王仮設住宅(45戸)で暮らす自営業の女性(72)。
山王仮設住宅の談話室に集まった住民からは、口々に湿気への悩みが語られました。
関東地方のプレハブメーカーが建設した同仮設は、土台の高さが10センチ程しかありません。取材した当日、建物の床下には1時間前まで降った雨で大きな水たまりができていました。
住民の声があがり、2011年の冬に風呂の追いだき機能がつき、その後も玄関前を覆う風除室の設置やトイレの便座ヒーターなど、一定の改善が図られてはきました。
しかし、住宅内部をみると、夏の暑さや冬の寒さで屋根が伸縮を繰り返したために起きたとみられる天井板の割れ目がありました。また、風除室では、引き戸のレールがゆがんだ家もあり、冬場は、引き戸が開かなくなるといいます。
3度目の夏を迎えたプレハブ住宅は、すでに傷みがはじまっているのです。
談話室の集まりで、口々に語られたのは「避難所から仮設住宅に移ることができたことは本当に感謝しているけど、長く住むと欠陥が目につく」という言葉です。
多賀城市では、災害公営住宅への入居は早くても来年秋です。最後の入居は2016年度中となっています。計画通りにいっても仮設住宅での生活が、5年を超えるなど長期化が避けられないものとなっています。
さまざまな欠陥
生活音が隣に丸聞こえの薄い壁、屋根のひさしがない、こたつやテーブルを置くと歩けなくなる狭い部屋−。住民らは劣化だけでなく、長期の生活の質に関わるさまざまな欠陥を訴えます。
山王仮設住宅自治会では、ボランティアの手を借りて、一部の住宅で試験的にひさしの設置をすることにしました。
自治会長の千葉昭蔵さん(70)は「3年いれば出られると思っていたが、長期化することは住民には重い負担だろう。自力で対応できることもあるが、まだまだいろんな問題が出てくると思う」と話します。(つづく)