19日の福島第1原発視察後に安倍晋三首相は、国際オリンピック委員会(IOC)総会で行った虚偽説明をふたたび繰り返し、汚染水の影響は「湾内のO・3平方キロメートル以内の範囲において完全にブロックされている」との認識を変えませんでした。
IOC総会以降も同原発では、タンクから漏れた放射能汚染水が側溝を通じて港湾南側の海岸に直接流出していたことや、タンク近くの井戸で採取した地下水から17万ベクレルものトリチウムが検出されるなどの重大な事態が相次いで発覚しています。首相も危機的な現状を目の当たりにして、「状況はコントロールされている」(IOC総会での首相発言)との認識は繰り返せませんでした。
事故対応にあたっている東電が、「いまの状態はコントロールできていないと考えている」(13日、山下和彦フェローと表明。東電推定で港湾内の水の約50%が1日で入れ替わっており、シルトフェンス(水中カーテン)で放射性物質の外洋流出を防ぐことはできていない状況です。「完全にブロックされている」という首相説明に多くの国民が不信の目を向けています。
同原発5、6号機の廃炉を東電に要請したという首相から記者団への説明がこの日のニュースとなりました。しかし、福島県議会が県内全原発の廃炉の請願を採択したのは2年抜本的解決のために、近く前の2011年10月のことです。遅きに失した廃炉要請です。しかも同第2原発の廃炉にはふれていません。
こうした不徹底の背景には、事故「収束宣言」撤回を拒否し続け、原発の再稼働・海外輸出推進に力を入れる安倍政権の原発推進政策があります。
日本共産党は17日、放射能汚染水の危機打開のために「緊急提言」を発表。放射能汚染水を海に流出させないことを大前提とした抜本的解決のために、原発への態度や将来の月のことです。遅きに エネルギー政策の違いを超え、すべての英知と総力を結集することが緊急かつ最重要の課題だと提起しました。
現地視察を受けて安倍首相は汚染水問題に「国が前面に出て私が責任者として対応したい」とも述べましたが、汚染水危機への対応が後手後手になっている根本には、東電や原子力規制委員会の″汚染水は薄めて海に流せばいい″という態度があります。
首相が責任ある対応をとるというのなら、事故「収束宣言」の撤回とともに、海洋放出を解決手段とする東電と規制委の姿勢をただちに改めさせることが不可欠です。(林信誠)
福島第1原発港湾にシルトフェンス(水中カーテン)が設置されている1、2号機間護岸エリアを視察する安倍晋三首相(中央)=19日、東京電力提供