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南相馬など除染延長・・国直轄事業

13-09-25tizu 「高すぎる堤防では海が見えなくなって危険だ」「もっと景観や自然環境に配慮してほしい」−。東日本大震災の被災3県を中心に進められている巨大防潮堤建設計画。宮城県では、「生命と財産を守るために高さは変えない」とする村井嘉浩県知事のかたくなな態度に各地で批判の声が上がっています。(釘丸晶)

津波は陸から

宮城県東松島市新東名地区の長石海岸は、松島湾を西に望み、太平洋沿岸の宮城県にありながら、海に夕陽が沈む場所です。

「震災時、津波は陸側から襲ってきた。防潮堤がかさ上げされれば、水が滞留してしまって逆に危険だ」。こう訴えるのは、同地区NPO法人「創る村」の飴屋善太さん(26)です。

東日本大震災の津波は、同地区から東に約2キロ離れた太平洋側の野蒜海岸から陸を通って押し寄せ、海抜3・1メートルの防潮堤を押し倒して松島湾に抜けました。

県は新東名地区の長石海岸を含め、松島湾一帯に海抜4・3メートルの防潮堤を整備する計画です。しかし、飴屋さんは「同じ松島湾を抱える松島町では、景観に配慮し、高い防潮堤はつくらないことになっている」と指摘します。

「今回の津波でも、チリ地震津波(1960年)でも、松島湾側からの津波被害はなかった。県は過去の津波高が塩釜と松島湾の一部で3・3メートルだったとして防潮堤建設を進めようとしているが、もっと地域の実情に合った計画にしてほしい」

県は昨年(2012年)11月に地区住民らを対象に説明会を開催。飴屋さんら住民に対してもたびたび説明に訪れていますが、あくまでも「計画に理解を求める」という態度で、年内での計画確定を目指しています。

(写真=上)「防潮堤がかさ上げされれば、水が滞留して危険だ」と訴える飴屋さん。奥の赤と白のポールが新しい防潮堤の高さを表示しています=宮城県東松島市新東名地区 (写真=下)伊里前川の前に立つ千葉さん。計画されている堤防の高さは川の上にかかる歌津大橋のフェンスまでになると言います=宮城県南三陸町歌津伊里前
(写真=上)「防潮堤がかさ上げされれば、水が滞留して危険だ」と訴える飴屋さん。奥の赤と白のポールが新しい防潮堤の高さを表示しています=宮城県東松島市新東名地区
(写真=下)伊里前川の前に立つ千葉さん。計画されている堤防の高さは川の上にかかる歌津大橋のフェンスまでになると言います=宮城県南三陸町歌津伊里前

誰も住まぬ地

南三陸町歌津の伊里前地区では、伊里前湾の海岸に海抜8・7メートルの防潮堤、湾から続く伊里前川に同8・7メートルから同6・9メートルの河川堤防が約1・1キロにわたって計画されています。

「みんな高台移転して誰も住まなくなる土地に、巨大な堤防が必要なのか」と疑問を口にするのは、地元でカキ養殖などに携わる千葉拓さん(28)です。「今の計画では地区の4割が堤防で覆われてしまう。自然と触れ合えるような海岸も残して、防災教育もできるような場所にしてほしい」

伊里前川は、川の中に「ザワ」と呼ばれる石垣を組み、網籠で魚を取る伝統的なシロウオ漁で知られます。しがし、工事が始まれば、その清流もどうなることか。

昨年10月ごろから地域で勉強会を重ねてきた千葉さんは、同計画が被災した堤防を復旧させる災害復旧事業のため、環境アセスメントの必要がなく、自然環境への影響もはっきり示されないずさんなものであることに驚きました。そこで12月の町議会に、堤防建設の再考を求める陳情書を提出。陳情書は全会一致で採択されました。

8月29日に開かれた国、県、町の合同説明会には住民約120人が参加。河川堤防ではなく水門を求める意見や、津波が河川をさかのぼって上流に被害が広がるなどの声が上がりました。地区の「まちづくり協議会」では9月上旬に堤防も含めて背後地の利用方法について話し合う「将来まちづくり部会」が立ちあがりました。

千葉さんは「ようやく、みんなで話し合える場ができた。どんな街をつくるかは地域の人が一番分かっている。意見を集約していきたい」と話しています。

合意徹底こそ

しかし、県知事のかたくなな態度は変わりません。9月議会で日本共産党の遠藤いく子県議が「住民合意を徹底し、合意がなければ(建設は)できないという立場で取り組むべきだ」と迫ったのに対し、村井知事は「何をもって合意とするか。一人でも反対したら、合意とならないというのでは事業は進められない」とのべ、建設計画を進める姿勢を改めて示しました。

このようなかたくなな態度が、逆に住民合意の進まない一因となっています。6日付河北新報は、岩手県で地元との同意を前提に県内13漁港で基本計画高を引き下げ、全ての建設予定地で住民の同意を得たのと対比し、「宮城県は地元同意が69%(7月末現在)にとどまっている」と報じました。

宮城県以外では防潮堤建設を見送った例もあります。

震災の津波で被災した青森県八戸市八戸港では、5月に開いた住民説明会で、建設賛成の意見よりも避難路・階段の設置や橋の拡幅などを求める声が多数を占めました。

住民の意見を踏まえ青森県は計画の方向性を見直し、防潮堤建設については将来的課題とし、避難や減災対策について優先して検討するとしています。

宮城県の遠藤県議は「知事の強硬な姿勢は許されません。地域の実情については、そこに住む住民が一番知っています。県が計画を押し付けるのではなく、いろいろな案の中から住民自身が選択することが大切。そうしてこそ津波の恐ろしさを伝えていく力となり、防災教育にいかすことができます」と話しています。

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