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クローズアップ 宮城 原発に代わる市民発電10年目/出資の民家に太陽光パネル

太陽光パネルの稼働を記念して撮影に応じる水戸部氏(左から2人目)ら=2024年12月、仙台市

「事業所の電気料負担軽減に期待」

 国が昨年示した「エネルギー基本計画」案で原発回帰の姿勢を強め、被災原発として初めて女川原発2号機(宮城県女川町、石巻市)が再稼働しました。そんな中、宮城県で「原発に代わるエネルギーを示す」ため、保育所や住宅の屋根などに太陽光パネルを設置してきた市民発電の活動が、10年目を迎えます。(江田耀)

 仙台を中心に活動するNPO法人「きらきら共同発電所」。住民や賛同者の出資を受け、希望した事業所や民家の屋根などに太陽光発電設備を無償で設置し、一定期間の売電益を受け取る活動を行っています。費用回収後は、太陽光パネルは譲渡されます。

福島事故に衝撃

 理事長の水戸部秀利さんは、福島第1原発事故に衝撃を受け、2015年に「きらきら」を結成しました。

 医師として20年にわたって原爆の被爆者診療を行い、多くの被爆者が数十年後に発病しているのを見てきたという水戸部さん。原発事故後に少量の被ばくなら問題ないとした政府の説明を、「少量の被ばくも積み重なれば30、40年後に発病率が高くなる。少量でも避けるべきだ」と批判しています。

 当初は売電収入を見込んで、保育所や空き地などに中規模の太陽光パネルを設置していました。しかし、固定価格買い取り制度中止後の20年以降は自宅で消費する電力を賄う自家発電用の小規模な形態に転換。女川原発が再稼働した昨年12月には、10カ所目となる民家の屋根に設置した太陽光パネルが稼働しました。

「再生エネこそ」

 自宅へのパネル設置を申し出た多々良哲さんは、「化石燃料はいずれ枯渇するが、その前に温暖化の進行に地球環境が耐えられなくなる。原発も同じで、放射能という人類と絶対に共存できない危険性がある。いずれ地産地消の再生可能エネルギーで賄わなくてはならなくなる」と指摘します。

 来年3月には市内の病院の屋上に太陽光発電パネルを設置する計画があります。

 広幡文事務局長は「医療機関や介護施設にも太陽光パネルの設置を取り組んでいきたい」と述べ、高騰する電気料金に苦しむ事業所の負担軽減になると期待を示します。

女川原発の地元では…

 女川原発が立地する女川町でも、NPO法人「女川・市民共同発電所」が2基の太陽光発電施設を運営しています。東日本大震災で被災した松木卓理事長らが、全国の賛同者から借り入れを受けて2基の太陽光発電パネルを設置し、18年に稼働しました。

 売電収入は借入金の返済や運営費などに充てています。稼働5年目で、返済額は4割程度だといいます。

 政府が原発活用を掲げ、再エネの発電事業者への出力制御が進む中、松木さんは「出力制御で収入減にならないか心配だ」と懸念しています。

 水戸部氏は、昨年開いた講演会でこの点を強調。「原発や火力発電は燃料の購入費用がかかるが、太陽光や風力などの自然エネルギーは、電力設備を一度つくってしまえば、ほとんどコストをかけずに発電できる」と強調しました。

(「しんぶん赤旗」2025年1月23日より転載)