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福島に生きる すべてを元に戻させる・・イチジク生産者 高橋勇夫さん(64)

「定年後の第二の人生をこなごなにされてしまった」。福島市内で加工用イチジクの「ホワイトゼノア」を栽培する高橋勇夫(いさお)さん(64)は、東京電力福島第1原発事故で受けた被害について語ります。

イチジクの生育を確認する高橋さん=福島市
イチジクの生育を確認する高橋さん=福島市

■泣くに泣けない

設備プラント会社のサラリーマンだった高橋さんは、59歳のときに早期退職。20アールの土地で2010年4月に植菌し、キノコの栽培を始めました。しかし原発事故で、大きな被害を出し、この土地でのキノコ栽培はあきらめました。原発事故は計画を台無しに。「泣くに泣けない」苦境に遭遇させられたのでした。

キノコ栽培の他にもおじがやっていたイチジク栽培を引き継ぎました。

西洋イチジクのホワイトゼネアです。ジャムや甘露煮など加工用に栽培されます。農林水産省統計(2011年)によると、イチジクの産地と収穫量のベスト5は愛知県(2814トン、19・06%)、和歌山県(2284トン、15・47%)、大阪府(1530トン、10・36%)、兵庫県(1282トン、8・68%)、福岡県(1281トン、8・68%)です。福島県は、収穫量全国15位、197トン、シェアが全国の1・33%にすぎません。

「モモやリンゴなど誰もが作っているものより、作る人が少ない果物をやってみよう」

無農薬による栽培を心がけました。イチジク栽培の大敵はカミキリムシ。これまで薬剤で駆除されてきましたが、バイオリサ・カミキリという製品が開発されました。

カミキリムシに寄生する昆虫病原性糸状菌を人工的に付着させたシートをイチジクの幹や枝の分岐部分に巻き、糸状菌に感染させて死滅させる微生物殺虫剤を使用しました。シートは自然分解するので回収する必要もなく、環境や人、家畜、有用生物に影響をおよぼさない駆除剤です。

■安全・安心優先

「開発されたばかりで高価ですが、安全・安心を優先させました」と高橋さん。一昨年(2012年)は不作と放射能汚染についての風評被害で価格が暴落。しかし、東京電力は前年の売上高の記録が残っていないことを理由に賠償に応じていません。「亡くなったおじは販売記録など残していなかった」と悔しがる高橋さん。国と東電に原状回復をさせる訴訟の目的に共感し、「生業を返せ 地域を返せ!」福島原発訴訟に加わりました。

現在約250本のイチジクを栽培。原発事故後、新たに100本増やしました。今年4月には1500本を挿し木し、来年4月に移植する予定の高橋さん。安全な環境を取り戻し、安心して食べられる果物を生産することは人生後半の生きがいに直結した課題です。

「東電は、被害者が請求した賠償金をきちんと支払うべきだ。水も、空気も、土地もすべてを元に戻させる」 。高橋さんの決意です。
(菅野尚夫)

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