自民党・公明党政権は、昨年閣議決定した「グリーントランスフォーメーション(GX)基本方針」で原発回帰へとかじを切りました。そのもとで初めてとなるエネルギー基本計画の改定原案が17日、経済産業省の審議会に出されました。
エネ計画として初めて「最大限活用」を明記し、東京電力福島第1原発の事故以来掲げてきた「可能な限り原発依存度を低減する」との文言を削除しました。原発回帰を鮮明に打ち出しました。
福島原発事故の教訓を投げ捨てるものであり、言語道断です。
■新規建設を明記
原案は、「必要な規模を持続的に活用していく」とし、原発の新規建設を初めて明記しました。民間で負いきれない巨額の投資リスクへの対策として、「政府の信用力を活用した融資等」を検討するなど、原発建設に前のめりです。
既設原発では、東京電力柏崎刈羽原発を明示して再稼働を進めるとし、2040年度の電力の原発比率を2割程度としました。
核のゴミの処理方法にめどはなく、原発事故が起きれば、住民と地域社会に深刻な被害を及ぼします。地震・津波など世界有数の災害大国である日本に、原発はあってはなりません。
電力の再生可能エネルギー比率は4~5割(40年度)とされており、極めて不十分です。再エネの潜在力は電力需要の7倍です。再エネ優先原則を明確にし、35年度8割、50年度100%をめざすべきです。
二酸化炭素など温室効果ガス(GHG)の排出削減が急務となっているもとで、石炭火力発電を温存しようとしていることは重大です。石炭火力は発電部門で最大の二酸化炭素排出源です。G7で石炭火力の廃止期限をもたないのは日本だけです。国連のグテレス事務総長も求めているように、30年までに石炭火力をやめるべきです。
大胆な省エネルギー対策も不可欠です。原案では、エネルギー消費削減は3割(13年度比)にもなりません。すでに実用化されている省エネ技術の普及を強め、6割削減することが求められます。
■排出大国の責任
世界全体では、GHG排出量を35年までに19年度比で60%削減することが求められています。日本は世界5位の排出大国であり、その責任を踏まえた削減に挑まなければなりません。
日本共産党国会議員団は政府に、来年2月に国連に提出する削減目標(35年度)を、13年度比で75~80%削減など野心的な目標とするよう求めました。
エネ計画の改定審議では13年度比60%削減という数字が出されました。これは19年度比で53%削減にすぎず、排出大国としての責任を棚上げするものです。
原発の再稼働と新規建設、原発依存度低減の削除、石炭火力の温存、いずれも自民党への献金をすすめている日本経団連の要求です。政府は、この要求を丸のみし、気候危機対策の足を引っ張っています。審議会では、原発推進派が多数を占めたり、露骨な異論封じも行われています。
計画原案を撤回し、市民参加の議論と国会での徹底した審議で、抜本的に見直すべきです。
(「しんぶん赤旗」2024年12月22日より転載)