東北電力は今月、2011年の東北地方太平洋沖地震で被災した女川原発(宮城県女川町、石巻市)2号機を29日に起動すると発表しました。再稼働すれば、炉心溶融事故を起こした東京電力福島第1原発1~3号機と同型の原発としても事故後初です。地元では、避難の実効性などを巡り、不安の声が広がっています。今度の選挙では原発ゼロを掲げる日本共産党が伸びることが、危険な再稼働を辞めさせる力となります。(松沼環)
女川原発は、牡鹿半島の中ほどにあり、事故時の住民避難に困難が伴います。原発問題住民運動県連絡センター世話人で日本共産党衆院宮城5区候補の中嶋れん(廉)さんは、同原発は日本一危険な再稼働と指摘します。
立地している牡鹿半島の沖には、大地震と大津波を繰り返し発生させてきた日本海溝があり、同原発はしばしば強い地震の揺れに見舞われてきました。11年10月のアメリカ原子力学会で、女川原発は世界で最も「地震の影響を受けやすい」原発と指摘されています。
火災・浸水も
同原発は、東日本大震災で、火災の発生や原子炉建屋が浸水するなど、重大事故になりかねない事態でした。さらに、2号機の原子炉建屋には、震災後1000カ所以上のひびが確認され、剛性(変形しづらさ)が著しく低下していました。
2号機をはじめ沸騰水型原発は格納容器容量が少ないため、事故時に内部の圧力を逃す排気(ベント)装置の設置が義務付けられています。ベントをすれば、格納容器内の放射性物質が大量に環境に放出されるためそれをこしとるのがフィルターベント装置です。しかし、重大事故時にはフィルターの目詰まりが懸念されています。
中嶋さんは「フィルターが目詰まりして格納容器の爆発を防ぐため、フィルターを通さないベントをすると360兆ベクレル、新規制基準の合格ラインである100兆ベクレルの36倍の放射能を出してしまという欠陥を抱えています」と話します。
中嶋さんは、東北電が昨年料金値上げ申請をしたときの資料を基に電源別の原価計算をしました。2号機が昨年2月に再稼働した仮定での計算で1キロワット時当たり35円になったといいます。大変高価な電力となります。
再エネの障害
さらに、懸念されているのが、2号機再稼働が再生可能エネルギー推進の障害になることです。東北電は、中嶋さんの問い合わせに昨年1年間の同電管内での再エネの出力抑制は1億3000万キロワット時、今年は6月までの半年ですでに1億7000万キロワット時と回答しています。
女川原発を1年間フル稼働させると約72億キロワット時となり、昨年1年間に出力抑制した電力量の60倍近い電力量です。
中嶋さんは「再エネの障害となり、温暖化対策を遅らせることになります。再稼働で、処理できない使用済み核燃料を増やすだけで、温暖化対策の障壁となるのだから、再稼働をさせるべきではない」とのべ、「裏金政治を終わらせて共産党が伸びることが原発を止める一番の力になります」と訴えています。
(「しんぶん赤旗」2024年10月26日より転載)