東北電力は29日夕、女川原発2号機(宮城県)の原子炉を起動させました。2011年3月の東日本大震災で被災した原発としては初めての再稼働になり、事故を起こした東京電力福島第1原発と同じ沸騰水型原発としても初めてです。住民からは、事故が起これば避難できないと不安の声があがっています。(抗議行動13面)
東日本大震災で、女川原発では外部電源5系統のうち4系統が遮断。13メートルの津波が襲い原子炉建屋などがある敷地(13・8メートル)ぎりぎりに迫りました。
2号機は発災時には起動中でしたが、津波が取水路から流入し建屋地下3階が浸水。非常用ディーゼル発電機2機が使用不能に、原子炉冷却ができなくなる一歩手前までいきました。
発災時に運転中だった1号機は18年に廃炉を決定。同じく運転中だった3号機は多くの機器の故障が発生し、再稼働に必要な原子力規制委員会への申請はされていません。
東北電は13年、2号機の新規制基準への適合性審査を規制委に申請。20年に許可を得ました。想定される地震の揺れを1000ガル(ガルは加速度の単位)、想定津波は約24・4メートルに引き上げ、東北電は防潮堤を29メートルにかさ上げしました。テロ対策施設を含めた費用は7100億円に上るとみられています。2号機では地震の強い揺れを繰り返し経験したため原子炉建屋の剛性(変形しづらさ)の低下が観測され、耐震補強などが必要となっています。
女川原発は、繰り返し大地震や大津波を発生させてきた日本海溝に面しており、東日本大震災後にも周辺では強い揺れを生じる地震が発生しています。牡鹿半島の中ほどにあり、事故時の避難計画の実効性が危ぶまれています。
2号機を巡っては、事故時の避難計画に不備があるとして住民が運転差し止めを求めて訴訟がたたかわれています。11月の仙台高裁で判決予定です。
東北電は、11月上旬に発電を開始し、その後いったん運転を停止して、設備の点検を行った上で再び起動させ、12月ごろの営業運転開始を想定しています。
再稼働中止 決断すべきだ
女川原発2号機の運転差し止めを求め提訴している訴訟団長の原伸雄さん(宮城県石巻市在住)の話 裁判を通じて、石巻市の避難計画の実効性がないことが明らかになっています。
避難計画では、避難してきた人は、避難所に入る前に検査所で放射性物質の汚染状況を調べて必要な場合は除染をすることになっています。しかし、検査所の要員は交通渋滞が起きれば到達できず、資材も事故が起きてからかき集めてくるので間に合いません。車のない人が避難するためのバスの確保や配備もできないので、住民の被ばくは避けられず、放射性物質の拡散も防げません。
この避難計画の下で再稼働して重大事故が発生すれば、住民の健康も命も守れないのです。東北電力は改めて再稼働中止を決断すべきです。
(「しんぶん赤旗」2024年10月30日より転載)