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“雨水と判断” 放出へ タンク周囲の水・・規制委で疑問の声 東電基準案

東京電力は9月30日、福島第1原発の汚染水貯蔵タンクの周りを囲む堰(せき)にたまった水を放出する暫定基準案を、同日開かれた原子力規制委員会の汚染水対策検討会合に示しました。

基準は、▽セシウム134は不検出(検出限界1リットル当たり20ベクレル)▽セシウム137は不検出(同30ベクレル)▽ストロンチウム90などベータ線を出す放射性物質(全ベータ)は同10ベクレル未満−などの項目を全て満たせば「雨水と判断」し、放出するとしています。満たさない場合はタンクに回収します。

東電は9月16日の台風に伴う大雨でタンクの周りの堰の弁を開けてたまった水1130トンを放出しました。今回の基準案は、その時の水の放射能濃度を参考にしたと説明しています。

しかし、規制委は東電の放射線の測定方法の信頼性が低いとして、規制委メンバーを現地に派遣し、測定方法をチェックすることを決めたほか、「基準自体が妥当なのか」「堰のかさ上げが先ではないか」など疑問の声が相次ぎました。

また、東電が先月の堰にたまった水の放出を「緊急措置」と説明したのに対し、規制委の更田(ふけた)豊志委員は「移送ホースを調達しておけば避けられたのに、緊急措置の名に値しない」と批判しました。

同日の東京電力の記者会見でも、記者から「全ベータが1リットル当たり10ベクレル末満なら雨水とするのはおかしいのではないか」「濃度ではなく、総量で基準を設けるべきではないか」など、たまり水の排出基準への疑問が相次ぎました。

解説・・東電 ご都合主義の基準案

東電が今回示した放出基準案は、地下水バイパス計画について地元の漁民に海洋放出を認めてほしいと説明して同意を得られなかった放射能濃度と比べて数百倍のものもあります。これを″雨水″とみなして放出することは、東電のこれまでの対応と矛盾するご都合主義です。

地下水バイパス計画とは、原子炉建屋に流れ込む地下水を減らして汚染水の増加を抑えるため、建屋の山側の井戸から地下水をくみ上げて海へ放出するというものです。東電は、7月にいわき市漁協に説明した際、井戸からくみ上げた地下水に含まれる放射能濃度を示しました。

セシウム134は1リットル当たり0・068ベクレル、セシウム137は同0・14ベクレルでした。また、ベータ線を出す放射性物質については、ストロンチウム90は検出限界値未満(検出限界値は1リットル当たり0・068ベクレル)、ストロンチウム89も検出限界値未満(同0・236ベクレル)でした。説明に対して、漁協はくみ上げた水の海洋放出に同意しませんでした。

タンク周りの堰(せき)内のたまり水を放出すれば、地面に染み込んだり、排水溝に流れ込んで外洋に出て、海の汚染につながる恐れがあります。(神田康子)

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