14日に退陣を表明した岸田文雄首相。自らの成果の一つとして誇ったのが、「原発再稼働や新型革新炉の設置」など「エネルギー政策の転換」です。岸田政権が突き進んできた「原発回帰」方針の裏には、原子力産業界から自民党への多額の献金があります。
法改悪を強行
岸田政権は2022年、「可能な限り原発依存度を低減する」としてきた歴代政府方針を一転。原発の「最大限活用」を掲げました。23年には原発の活用を「国の責務」とし、東京電力福島第1原発事故の教訓を投げ捨てて60年超の老朽原発の運転期間延長を可能にする法改悪を強行しました。
政府の「原発回帰」政策を後押ししてきたのが、電力会社や原子力関連の企業などでつくる「日本原子力産業協会」(原産協会)など、“原発利益共同体”です。
原産協会は、原発新増設への事業環境整備や革新炉の技術開発への支援拡大などを提言。23年に改定された原子力基本法は、原産協会の要求そのものの内容になりました。
現在行われている、国の中長期的なエネルギー政策の方向性を示す「エネルギー基本計画」の見直し議論では、経済産業省の審議会「総合資源エネルギー調査会基本政策分科会」などに協会の会員企業が委員として参加。「再稼働のみならず、リプレース(建て替え)・新増設に向けた政策の具体化が必須」(日本製鉄・橋本英二代表取締役会長)、「第7次エネルギー基本計画で、新設基数も含めて原子力の必要容量などを具体的に示し、事業者に事業継続や投資判断を促すことも必要」(三井住友銀行・工藤禎子取締役)など原発推進の声を上げています。
多数の企業が
その原産協会の会員企業が自民党の政治資金団体「国民政治協会」に献金した額は、自民党が政権に復帰した後の13年からの10年間に70億円超にも上ります。(グラフ)
22年分の政治資金収支報告書によれば、「革新軽水炉」などを手掛ける日立製作所3500万円、政府が推進する「高温ガス炉実証炉」や「高速炉実証炉」などの設計・開発を担う三菱重工業3300万円など原子炉メーカーが多額の献金をしています。
経産省の審議会に委員を送っている企業では、日本製鉄2700万円、三井住友銀行2000万円、東京海上日動火災保険1834万円など。また、大手商社は三菱商事、伊藤忠商事、丸紅が各2800万円、原発建設にかかわるゼネコンは大林組、鹿島建設、清水建設、大成建設、竹中工務店などが各1800万円を献金しています。
政府は、24年度予算で「高温ガス炉実証炉開発」に274億円、米仏との「高速炉実証炉」共同開発に289億円など次世代原発開発費に多額の予算を計上。原産協会が会員企業を対象にした調査では、電力各社から会員企業への原発関連支出(22年度)は1兆8392億円で、前年度から746億円増えています。
岸田政権が「原発回帰」政策で、原子力産業を手厚く保護し、優遇する政策を推し進める裏で、多額の“原発マネー”が献金として自民党に還流している―。原発利益共同体と自民党との癒着が国のエネルギー政策を大きくゆがめています。
(「しんぶん赤旗」2024年8月26日より転載)