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ドイツ 全原発停止1年 再エネ56% 過去最高に/市民が再エネ企業 原発派とのたたかいも続く

 ドイツが国内全ての原発を停止して、4月で1年を迎えました。全発電量に占める再生可能エネルギーの割合が過去最高の5割に達しています。原発の廃炉や放射性廃棄物の処分に取り組みながら、2045年までのカーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)を目指しています。(ベルリン=吉本博美 写真も)

背景には福島原発事故

 原発停止から1年に際しハーベック経済相は15日、国内の電力供給は安定していると強調。「カーボンニュートラルを実現するために今後も努力を続けなければならない。国民が団結し、共に立ち上がることを期待する」と述べました。

 ドイツ当局発表によると、発電量に占める再生可能エネルギーの割合は、原発3基が稼働していた22年4月から23年4月は約5割でした。停止後の23年4月から24年3月末に至るまでに56%へと上昇しました。

 かつて全発電量の30%以上を原子力発電が占めていたドイツ。初めて商業用原発が稼働したのは1961年。86年のチェルノブイリ原発事故(旧ソ連・現ウクライナ)を機に反原発の世論が高まり、98年に社民党・緑の党の連立政権が電力業界と原発全廃を基本合意しました。

 その後原発推進派だった保守・キリスト教民主同盟のメルケル政権が稼働延長を決定。2011年の福島第1原発事故を受けて「人々を守ることを第一とする」と全原発の稼働停止を再決定しました。

 福島原発事故が起こった当初の発電割合は再エネが20%。原子炉17基を段階的に停止し、再エネ割合の倍加にかじを切りました。

 現在の課題は、原発の解体作業と放射性廃棄物の処分場の選定です。世界原子力産業報告によると、ドイツの放射性廃棄物は全国16カ所に保管されています。31年末までに政府は最終処分場を確定するとしながら大幅な遅れが見込まれています。

 原子炉の稼働は終了しましたが、北西部の旧エムスラント原発付近の核燃料製造施設が動いています。原発大国フランスの企業が運営し、ロシア企業と提携して東欧の原発向けの核燃料を製造しています。完全な脱原発に向けた市民の抵抗運動はいまも続いています。

強い願い 環境に優しく

 ドイツには脱原発運動をきっかけに市民が立ち上げた再生可能エネルギー企業があります。南部バーデン・ビュルテンベルク州に本社を置くシェーナウ電力会社は1994年に創立され、太陽光・水力エネルギーからの電力を供給しています。電気代の一部を原資に、ソーラーパネルや蓄電池の設置、エネルギー効率良い暖房器具の取り換えも支援しています。

 同社を支える協同組合の組合員数は1万3千人、顧客数は20万人を超えています。エネルギー政策の広報代表エファ・シュテーゲンさんは企業に支援者の声もよく届くとして「環境に優しいエネルギーで暮らしたいという人々の要求はこれからもやまない」と話します。

 シュテーゲンさんは原発をめぐる現在の課題について、「原発はクリーンエネルギーだ」という推進派のうそが国内外で広がっていると懸念します。

 近年原子力産業のネットワークが活発化する欧州。シュテーゲンさんは各地で原発の危険性とドイツの脱原発に関する講演を活発に行い、推進派のキャンペーンを批判しています。

 「原発は全くクリーンではなく、ウラン採掘からもろもろのプロセスで有害なごみを発生させます。ドイツでは原発の解体作業が始まっているにもかかわらず、一部メディアや野党が『再稼働すべきだ』というのです」

 シュテーゲンさんは「ドイツで全原発が稼働停止したのは、安全で環境に優しい社会を求める市民運動の成果」だと強調します。

 ドイツでは伝統的に産業基盤が弱い地域に原発関連施設が置かれてきました。シュテーゲンさんが生まれた西部デュイスブルクはかつての炭鉱地域。発掘するほど資源がなくなり、地域経済が成り立たなくなります。

 「私の町でも未来の不安に目をつけた原発業者が住民たちに『ここに仕事を作りましょう』と、放射性廃棄物の処理施設をたてようと話を持ちかけてきた」と振り返ります。

 チェルノブイリ原発事故の影響で、ドイツでも各地で放射能を含んだ雨が降り、牧草地や農作物が汚染されました。事故が起これば自由に外出もできず、生活が一変する―。シュテーゲンさんも子どもの頃から脱原発を望み行動してきた一市民です。

 「原発がどれほど危険なのか。私たちは絶対に忘れてはいけないし、これからも伝えて続けていきたい」

(「しんぶん赤旗」2024年4月28日より転載)