東京電力福島第1原発事故の収束の見通しが立っていないにもかかわらず、岸田自公政権は、原発回帰の道を突き進んでいます。こんなとき、NHKETV特集「膨張と忘却」(2日放送)は、結論ありきの原発政策の無責任さを改めて浮き彫りにしました。
番組の副題は、「理の人が見た原子力政策」。長年、国の原子力政策に関わった研究者・吉岡斉氏が副学長を務めた九州大学に残した数万点の未公開資料「吉岡文書」に加えて、関係者の証言などをもとに国の「核燃料サイクル」政策続行の舞台裏に迫りました。
「核燃料サイクル」というのは、原発を動かせば必ず出る使用済み核燃料を青森県六ケ所村の再処理工場で再処理し、再利用する仕組み。しかし、再処理工場は、建設開始から30年もたったのに、いまだに完成のめどもたっていません。再処理した後のウラン、プルトニウムを使用するとしていた福井県の高速増殖炉「もんじゅ」も1兆円以上の国費が費やされた末、廃炉が決定、「核燃料サイクル」自体、破綻しているのが現実です。
番組は、吉岡氏が、「日本の原子力政策は、合理的議論を尽くした末のコンセンサスにもとづいて進められてきたのであろうか」と指摘していたことを明らかにしました。経済産業省の若手官僚からも「いったん立ち止まって国民的議論が必要」と内部告発があったにもかかわらず、政策変更のコストといった非論理的な理由をつけ見直すことなく今にいたっているのです。
注目したのは、核燃料サイクル継続を決めた裏で開かれていた自民党と電事連幹部、官僚の極秘会議の内部文書。NHKが入手したもので、「バック(核燃料サイクル)が止まれば、フロント(原発)が動かなくなる」「ウランの価格が上がるとか、強引に仮定を作れば良い」…。
番組では、ある有力政治家から「うそは承知で、“できる、できる”って言っていればいいんだ」と言われたとの、内部告発した若手官僚の証言も。
国民の苦難をよそに原発に固執する自民党。その背景には、この10年間だけで70億円を超す原発利益共同体から自民党への献金があります。利権のために無謀な原発政策を続ける自民党政治はもう終わりにしなくてはなりません。
(藤沢忠明)
(「しんぶん赤旗」2024年3月17日より転載)