「国民への丁寧な説明」と繰り返した岸田文雄首相の年頭記者会見(4日)は、その発言とは真逆に、必要な説明を放棄する“強権的”な姿勢をあらわにしたものでした。
根本切り込まず
政治資金パーティーをめぐる裏金問題が、昨年末から一大疑獄事件の様相となり、国民から厳しい批判を受けており、この問題での首相の発言が注目されていました。
岸田首相は国民の「信頼を回復」するために「自民党の体質を刷新する」として、自民党総裁直属の機関として「政治刷新本部」(仮称)を設置すると表明。一方で、“何をやるか”については、「政治資金の透明性の拡大」と「政策集団のあり方のルールづくり」という方向性を示しました。どちらも、裏金疑惑の根本問題には切り込まないごまかしです。
金権腐敗問題の根源である企業・団体献金を問題にしないどころか、企業・団体献金の温存を前提とした「透明性」の議論に矮小(わいしょう)化しています。政治資金パーティー券の大半は企業・団体が購入しており、利益率が9割を超えるなど、形を変えた企業・団体献金となっているのが実態です。その一部が裏金となっていたのです。真相を徹底究明し、パーティー券購入を含め企業・団体献金の全面禁止が必要です。
日本共産党が提案している「企業・団体献金全面禁止法案」こそが、国民の信頼を「回復」する唯一の道です。
「派閥」反省なし
さらに、岸田首相は、「派閥」のことを「政策集団」と美化し、「(政策集団は)政策を研さんし、若手を育成することを目的としていたはずだ」などと語り、「政策集団(派閥)が本来の目的から外れて、カネだとかポストを求める場になっていたのではないか」などと発言。「あり方のルールをつくる」と述べ、派閥の存在を容認しています。
しかし、今回の疑惑のパーティー券収入は派閥主催のパーティーによる収入で、派閥がまさに「カネとポストを求める基盤」であることを露呈したのです。「政策集団」などの言い換えでごまかしを試みても、旧態依然たる自民党の派閥・金権政治の実態には変わりはありません。根本的反省の欠如を浮き彫りにするだけです。
能登半島地震を受けて、記者から「原発について質問させてください」「原発に対してコメントしないのは異常です」との声が上がりました。首相は取り合うことなく、一方的に会見を打ち切り、その場を去りました。昨年来の国民の声を聞かず、原発の再稼働・増設を強行する姿勢を改めてあからさまにしました。
能登半島に立地する志賀原発では、外部電源が一部使えない、配管が壊れて絶縁や冷却のための油が漏れだす、使用済み核燃料プールの水が一部あふれでるなど深刻なトラブルが起きました。被災者を含めて国民への「丁寧な説明」が最も必要だったのではないでしょうか。そもそも今回のような巨大な地震が起きる地域に原発をつくって、地震のたびに深刻な不安を与えること自体が根本問題です。(若林明)
1月7日 更新
(「しんぶん赤旗」2024年1月6日より転載)