こんな判決で終わらない
東京電力福島第1原発事故で福島県から愛知、岐阜、静岡の各県などに避難した42世帯約120人が国と東電に計約5億3000万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が22日、名古屋高裁でありました。松村徹裁判長は、一審名古屋地裁に続いて、国の責任を認めず、東電だけに賠償を命じました。賠償額は、既払い分を控除し89人について計約7530万円としました。
松村裁判長は、国が2002年7月に公表した地震予測「長期評価」について「信用性があった」と指摘し、遅くとも同年末の時点で、敷地を大きく超える高さ15・7メートルの津波の到来を予見できたと判断。しかし、国の規制権限を行使しても、津波対策として講じられるのは、「長期評価」で想定された津波に対応した防潮堤の設置になった可能性が高く、実際の事故を防ぐことはできなかったと結論づけ、国の責任を認めませんでした。
原告が主張した建屋などの水密化対策については、「事故の回避のため有用であった可能性があることを示唆する考えもある」としながら、防潮堤に加えて他の対策が講じられた可能性があるとはいえないと退けました。
同種の訴訟は全国に約30件あり、最高裁が昨年6月17日に四つの訴訟について国の責任を認めないとする統一判断を示しています。
閉廷後、会見・報告集会を開いた原告側の“だまっちゃおれん”原発事故人権侵害訴訟愛知・岐阜の田巻紘子弁護団事務局長は「被害の実態に向き合わず、国の責任を認めなかった最高裁に忖度(そんたく)した不当な判決だ」と強調しました。宮田陸奥男弁護団長は「被ばくを避ける権利を原告団は声を大にして主張したが、まったく無視されてしまった。最高裁におもねった判決だ」と指摘しました。
福島県伊達市から避難した岡本早苗さん(45)は「こんな判断を残したまま、たたかいを終わっていくことはありません。必ず最高裁で、これを乗り越える判断を勝ち取れるよう、新たなたたかいが今日からスタートすると思ってがんばりたい」と表明しました。
(「しんぶん赤旗」2023年11月23日より転載)