中国電力が建設中の島根原発3号機(松江市鹿島町)について、国による原子炉設置許可の無効確認と中電への運転差し止めを求めた訴訟の第1回口頭弁論が9月2日、松江地裁(河村浩裁判長)で始まりました。「中電・島根原発3号機の運転をやめさせる訴訟の会」の井口隆史共同代表に聞きました。(島根県・桑原保夫)
・・島根原発は全国で唯一、県庁所在地に立地していますね。
井口 そうなんです。そのため都市機能が集中している半径10キロ圏内には県庁や市役所、島根大学、病院が含まれ、20キロ圏内に人口20万人の市の全域が入ります。30キロ圏だと西は出雲市、東は鳥取県境港市、南は雲南市までで約46万9000人が住んでいます。福島第1原発事故から考えれば、島根原発で重大事故が発生すれば避難は極めて困難になります。島根原発の直近には22キロの宍道断層や海底活断層があり、本来、原発の立地には危険すぎる場所です。
今回の福島原発の事故は決して「想定外の事象」ではありません。収束にむけての効果的な対応ができていない今、原発と人類の共存は無理と改めて強く感じます。
・・これまで国や中電は「安全神話」をふりまいてきました。
井口 原発が動き出して60年間に、世界で既に3回も大事故が起きています。技術が一番進んでいたはずのアメリカをはじめ旧ソ連、「原発は技術的に優れているから絶対安全だ」といってきた日本でも起きました。4回目の事故が起きないという確証はなく、いったん事故が起きればどうすることもできないというのが福島事故の教訓です。原発が安全に稼働しても、確実に危険で取り扱いが難しい放射性廃棄物が処理できないままたまっていくという、深刻な現実が浮かび上がってきました。
私たちの歴史が数十年、数百年程度で終わってもかまわないという人はいません。しかし、原発はその方向に向かわせてしまいかねない危うさを持っています。この際、原発は廃炉の方向にもっていくべきです。
・・島根・鳥取両県をはじめ全国に原告団が広がっていますね。
井口 島根・鳥取で326人、全国を含めると428人になります。いったん稼働が認められてしまえば、3号機は40年、延長の可能性を考えれば60年間稼働することになるかもしれません。自分のためだけでなく、子や孫、将来世代のためにも、さらには日本や近隣諸国の人々のためにも、その稼働が認められることのないように、最大限の努力を払って訴え続ける覚悟です。