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汚染水放出で水産業界苦境 ホタテで倉庫いっぱいに巣/中国の水産物輸入停止が影響

 東京電力福島第1原発事故で発生した汚染水(アルプス処理水)の海洋放出で水産業界が苦境に陥っています。問題をめぐり、ある水産業関係者は、中国による日本産水産物の輸入停止の影響が、業界に打撃を与えていると指摘。政府支援策は「期待できない」といいます。(小酒井自由)

 岸田文雄首相が海洋放出計画を認めたことで、東電は海洋放出を8月24日から開始。今月11日に1回目の放出が終了しています。

 この関係者は、業界の「喫緊の課題」として、損失補償と水産物停滞の解決を挙げます。

 海洋放出に対し、中国や香港、マカオが水産物の輸入規制を強化しました。特に中国は日本の輸出先トップで、2022年の水産物輸出額は836億円と他国を圧倒。輸出品目ではホタテ貝が489億円と飛び抜けています。

被害額が大きく

 関係者は、中国企業との水産物取引の商談が破談し、水産加工会社や卸売り会社、貿易商社に影響が広がっているといいます。ウニや高級魚の日本国内での価格は、中国市場の半額近くでなければ流通しないともいいます。

 東電は、海洋放出に伴う風評被害の賠償受け付けを10月2日に開始します。業界内では損害補償請求に向けて、昨年度との価格差を出せるよう準備を進めているといいます。ただ、中国にホタテ貝を輸出していた水産加工会社や卸売り会社、商社は被害額が大きく、損失に見合う補償がされるのか不安が広がっているといいます。

政府に期待なし

 水産物の物流も停滞しています。もともと全国にある卸売り業者などの水産物を保存する冷凍倉庫が足りておらず、その状況で中国の禁輸措置が起きたと関係者は指摘します。ただでさえ輸出できないホタテ貝で倉庫がいっぱいになる中、「これから北海道で秋サケ漁が本格化する」といいます。

 関係者は、秋サケの今年の水揚げ予測量は約8万トンといいます。現在はまだ6400トンほどですが、水揚げが本格化すれば鮮魚の状態での出荷に限界がきて、冷凍保存が必要になります。

 行き場をなくした水産物が増えれば、「漁獲規制もあり得る」。その影響は水産加工業者にまで及ぶとみられ、「相当大きな問題になりつつある」と警鐘を鳴らします。倉庫の増設は「東京都内だとかなり高額になり、簡単なことではない」とも。

 政府は、総額1007億円の政策パッケージで国内消費拡大や輸出先の転換を支援するなどとしています。

 関係者は「支援があっても新規販路の獲得には時間がかかる」などと述べ、損害補償があいまいな政府パッケージは期待できないといいます。「海洋放出はしてほしくない」と胸の内を明かしました。

(「しんぶん赤旗」2023年9月29日より転載)