運転開始から原則40年の法定運転期限を間もなく迎える、九州電力川内原発1・2号機(鹿児島県薩摩川内市)の20年延長運転を巡って、県民に賛否を問う県民投票の実施を求める運動が大きく広がっています。(鹿児島県・畑井田美咲恵)
「私たちは川内原発の立地県民として、20年延長運転を認めるのか、それとも40年で停止・廃炉の道を進むのか選択したい」―。
市民団体「川内原発20年延長を問う県民投票の会」は、県内で6月1日から7月30日までの60日間、県に条例制定を求める直接請求署名に取り組みました。請求に必要な署名数(県内有権者の50分の1、約2万7千)をはるかに上回る、5万290人分の署名が寄せられました。各自治体の選挙管理委員会が審査した結果、有効な署名数は4万6千人分を超える見通しとなり、請求へ向けて、準備が進められています。
県民が決める
県民投票の会は「原発は、ひとたび事故をおこせば、そこに住む住民に甚大な影響を及ぼします」「延長運転に賛成・反対に関係なく、大事な問題は県民が決めるべきだと思う人は、ぜひ署名に賛同してほしい」と、広く呼びかけました。6月には雨が降り続き、7月入ると炎天下で、街頭署名や戸別訪問など、大変な努力の中、署名が大きく広がり、41自治体から、請求に必要な署名数の約2倍近くにもおよぶ、5万人分を超えて寄せられました。
川内原発1号機は来年7月、2号機は2025年11月に稼働開始から40年の運転期限が迫っており、九電は原子力規制委員会に延長を申請、規制委が延長を認可するかどうか審査を進めています。
県議会9月議会で、県民投票の効力について問われた県は、「条例による住民投票の結果は、首長や議会に対する拘束力を持たせることはできないとの国の見解が示されている」と述べ、法的な拘束力はないとの国の見解を示しました。
塩田康一知事は前回知事選でも、就任後も、県民投票について「必要に応じて県民の意向を把握するため、県民投票を実施する」と公約に掲げてきました。しかし、5月末に川内原発について検証する県の専門委員会が報告書をまとめたことを受け、県民投票を行わない意向を示しました。県民からは「公約違反だ」との声が上がっています。
近日にも請求
県民投票の会の向原祥隆事務局長は「川内原発の延長運転は2年や3年ではなく、20年というとてつもなく長い年月を拘束する問題。従来の規定を超えた、飛行機の運航や、医療機械の使用は許されません。20年延長運転はまさに鹿児島県の将来を決する重大問題です」「主権者は県民。延長運転は県民投票で決めてほしい。法定数の2倍の署名は、県民投票を求める県民の意思が示された結果です。知事と県議会は住民の意思を最優先すべきです」と語ります。
県民投票の会は近日中にも条例制定を請求し、塩田知事は条例案に自身の意見を付けたうえで、20日以内に県議会を招集、県議会が条例の可否を審議します。
(「しんぶん赤旗」2023年9月21日より転載)