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汚染水放出 漁民の努力を無に/全国沿岸漁民連 二平章事務局長

 国、東京電力が東電福島第1原発事故による汚染水(アルプス処理水)の海洋放出を強行したことに、漁民から怒りの声が広がっています。全国の沿岸漁民1万人以上が加わるJCFU全国沿岸漁民連絡協議会の二平章事務局長に聞きました。(内田達朗)

 「海洋放出は許せない」というのが、浜(漁民)の声です。「関係者の理解なしにはいかなる処分も行わない」という約束を破り、石油備蓄用大型タンクでの保管など海洋放出以外の方法の真剣な検討もせず、放出ありきで進めたことに怒りでいっぱいです。福島県漁連はもちろん、全国漁業協同組合連合会(全漁連)も「反対は変わらない」と抗議の声をあげています。全漁連は定期総会で反対の特別決議も採択しており、放出反対は日本全国の漁民の声です。

本格操業の直前

 原発事故のあと、福島の漁民は、試験操業を続けながら、流通業者、卸売市場関係者と話し合い、漁獲量、魚種などを増やす努力を積み重ねながら、水揚量を事故前の2割にまで回復させてきました。そして今年からは本格操業へ移行することを決めていたのです。その矢先の海洋放出に、「私たちの努力を無にするのか」と漁民たちが怒りの声をあげるのは当然です。

 岸田政権は、「風評被害」への対策を掲げ、放出しても「科学的に安全」と宣伝しています。今はすべての魚種で放射性物質は安全基準以下の数値となっていますが、「食べたくない」と考える人もでるのは当然です。

 「風評被害」が起きるのは、専門家が具体的に示した海洋放出以外の方法を検討せず、国内外への十分な事前説明を欠いたまま放出を強行したからです。それなのに「中国の輸入制限はけしからん」というのは筋が通りません。前農水大臣の「(禁輸は)想定外」との発言は、周辺国の対応を見誤るもので漁民に対して無責任です。

 「風評被害」の根本原因は、国や東電が国内外から信頼されていないからです。数々の警告を無視し「日本の原発は事故を起こさない」と強弁し、事故の責任は今もって誰もとってはいないのです。

今すぐ中止せよ

 汚染水の放出で魚の価格が下落し、また出荷停止の被害も出始めています。

 国は、被害対策として約1000億円を水産事業者支援に計上しましたが、これ以上事態を悪化させないためには、風評被害を起こす汚染水の放出を今すぐ中止することです。そのうえで、(1)広域遮水壁を建設して地下水流入を防ぎこれ以上汚染水を増やさないこと、(2)大型タンクでの保管、モルタル固化など海に流さない別の汚染水対策に踏み出すことなのです。

(「しんぶん赤旗」2023年9月18日より転載)