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福島第1原発 汚染水(アルプス処理水) 問題どこに Q&A

東電が2015年8月25日付の社長名で、福島県漁連に出した東電の文書。「関係者の理解なしには、いかなる処分も行わず、多核種除去設備で処理した水は発電所の敷地内に貯留いたします」とあります

 政府・東京電力は先月、福島第1原発事故で発生した汚染水(アルプス処理水)の海洋放出を開始し、1回目として11日までに計約7788トンを放出しました。日本共産党は海洋放出の中止を強く求めています。問題点をQ&Aでみました。

Q1 海洋放出 なぜ反対

 Q 日本共産党はなぜ反対するのか、一番の問題はどこにあるのか?

 A 東電福島第1原発事故から12年半になります。福島県の漁業者は本格操業への移行をめざし水揚げ量の増加をめざしていますが、水揚げ量は事故前の2割ほどにとどまります。事故の被害に苦しみ、今も復興途上です。その福島県漁業協同組合連合会(福島県漁連)が2015年8月に政府、東電それぞれと交わしたのが「関係者の理解なしには、いかなる処分も行わない」という約束です。東電は約束の中で、さらに「多核種除去設備(アルプス)で処理した水は発電所敷地内のタンクに貯留いたします」と表明しています。

 約束したにもかかわらず、それを軽々しくほごにした海洋放出の強行は民主主義の根幹を揺るがすものです。

 政府は「一定の理解を得た」と居直っていますが、福島県漁連、全国漁業協同組合連合会は放出決定に「漁業者・国民の理解を得られない海洋放出に反対であることはいささかも変わるものではない」と表明しました。関係者の理解が得られたなどとは到底言えないのをねじまげています。約束を守り、放出は中止すべきです。

タンクが林立する東京電力福島第1原発=2021年2月

Q2 水は増え続けるが

 Q 水は増え続けており、タンクを置く場所はなくなっています。どうしたら?

 A 技術者も参加する民間シンクタンクから、海洋放出せずに済む代替案が提案されています。

 汚染水を砂やセメントと混ぜてモルタル化して半地下コンクリート製タンクに流し込む方法や、石油備蓄などで実績がある大型で堅ろうなタンクに長期保管し、半減期(放射能の量が半分になるのに要する期間)が12・3年のトリチウム(3重水素)の減衰を待つ方法です。モルタル固化は既存の土木技術で施工可能で米国の核施設で実施されています。国の報告書でも選択肢の一つに挙げられていました。

 政府・東電はこうした安全に保管する代替案に真剣に向き合わず、「タンクが満杯になるから」となし崩し的に安易な方法を取ったのです。

 大きな問題は、地下水や雨水が原子炉建屋に流入し汚染水が今なお増加し続けていることです。地盤を壁状に凍らせる「凍土壁」を2018年に完成させましたが、効果が限定的だからです。現在、1日当たり約90トン増えているため、タンクの水は海洋放出した分がそのまま減るわけではありません。東電は2051年までに放出を完了するとしていますが、先は見通せません。

 汚染水を抜本的に減らすため、凍土壁より広く、長さ3・7キロを囲む広域遮水壁の設置などの提案が専門家集団からされています。汚染水をゼロに近づける抜本的な対策の真剣な検討こそ必要で、海洋放出の必要もなくなります。

Q3 呼び方の根拠は何

 Q 汚染水(アルプス処理水)と呼ぶ根拠は?

 A 福島第1原発の原子炉建屋などには、事故で溶融した核燃料デブリに触れて、セシウムやストロンチウムなどさまざまな放射性物質を含む高濃度の放射能汚染水がたまっています。この汚染水をアルプスで処理した水が「アルプス処理水」と呼ばれ、敷地内のタンクにためられています。

 アルプスで処理しても水素とほぼ同じ化学的性質をもつトリチウムなど取り除けない放射性物質があります。実際、処理水中のトリチウム濃度は、放出基準を数倍~数十倍程度、上回っています。

 また、アルプスは放射性物質を完全に除去できるわけではないため、処理水からは、放出基準を下回る濃度とはいえ、ヨウ素129、ストロンチウム90、炭素14、セシウム137など、原発事故由来の放射性物質が検出されています。政府は通常の原発からトリチウムが放出されている例を挙げますが、通常運転の原発とは違います。燃料デブリに触れた水を海洋放出するのは世界で初めてです。海洋放出に社会的な理解が得られていない理由の一つです。

 アルプスで処理しても所定の性能が出せず、トリチウム以外の放射性物質が放出基準を超えて残留する水も大量にあり、全体の約7割を占めます。東電は「処理途上水」と呼んでおり、アルプスで再処理する計画です。

 また、今後放出される放射性物質の総量について、海洋放出をめぐる閉会中審査(8日)で日本共産党の岩渕友参院議員が、東電の小早川智明社長にただしましたが、それについての答弁はありませんでした。

Q4 「お墨付き」言うが

 Q 政府は、国際原子力機関(IAEA)の包括報告書が海洋放出について「国際的な安全基準に整合的」としたことをもって「お墨付き」をもらったと繰り返していますが。

 A IAEAは政府が海洋放出方針を決定した後に政府の依頼で審査したものです。審査の範囲は限られ、政策決定についての評価も含まれておらず、海洋放出以外の代替案なども評価していません。報告書は、あくまで設備の性能などを評価したものであり、「政府方針を推奨するものでも承認するものでもない」としています。

(「しんぶん赤旗」2023年9月16日より転載)