【パリ=浅田信幸】地球温暖化の原因である温室効果ガスの削減について、欧州連合(EU)は京都議定書でEUに課せられた1990年比8%削減の目標を大幅に超過達成することが確実になりました。EUの執行機関である欧州委員会が10月9日、報告書を公表しました。
京都議定書で削減義務を負うEU15カ国は全体として、11年に90年比で温室効果ガス排出量を14・9%削減しました。第1約束期間(2008~12年)の平均では12・2%の削減となります。これに排出量取引などの京都メカニズムや温室効果ガスの森林吸収による削減分を加えると15・5%の削減となりました。
12年の実績は今後、集計されますが、目標の8%削減に対し、ほぼ倍の超過達成が予測されます。
国別では、EU15カ国中8カ国が国別目標を超過達成するか、達成する見込みがあり、5カ国が京都メカニズムの活用で達成可能とされます。ルクセンブルクとイタリアの2国は目標に到達しない恐れもあります。
議定書発効後にEUに加盟した13カ国を含む現EU28カ国全体では、90年比で16・9%の削減となっています。
90~11年の間にEUの国内総生産(GDP)は15カ国で44%、28力国では45%の伸びを示しています。報告書は「経済成長と温室効果ガス削減は切り離されている」ことを示すと指摘しています。
報告の発表に際し、ヘデゴー欧州委員(気候変動担当)は「欧州は90年以来、経済を拡張しながら相当な排出量を減らした。2020年までの20%削減という目標も手の届くところにある。追加的な政策を通じて、目標を超過達成する見通しだ」とさらに次の展望を語りました。
日本は逆に増加
世界で第5位の温室効果ガス排出国(世界の3・8%、2009年)である日本は排出削減にきわめて後ろ向きです。
民主党政権の時に京都議定書の枠組みから離脱し、第2約束期聞には不参加。しかも安倍政権は、2020年までに1990年比で25%削減するとした政府の国際公約を「ゼロベース」で見直すと表明し、市民団体から批判の声が上がっています。日本の温室効果ガスの排出量は2011年度には1990年比で3・7%増加しています。
京都議定書 1997年に京都で開かれた国連気候変動枠組条約第3回締約国会議(COP3)が採択し地球温暖化防止のためのルールを定めた初の国際条約(2005年発効)。08~12年の第1約束期間に先進国全体で温室効果ガスを90年比で5%(日本は6%、EUは8%)削減することを義務づけました。13年から始まった第2約束期間(~20年)について、昨年末に開かれたCOP18は、削減目標を18%とし、目標を引きあげる方向で14年までに見直すことで合意しました。