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ひと/7月から伝言館の事務局長に就任して原発問題伝える丹治杉江さん(66)

 福島県楢葉(ならは)町の宝鏡寺境内にある「ヒロシマ・ナガサキ・ビキニ・フクシマ伝言館」で原発事故被害を伝えます。

 「資料の展示だけでなく、日本史上最悪の放射能公害の実態や被災者の苦難を話し、来館者がまた誰かに伝えていく。ノーモア・フクシマの口伝の施設にしたい」。大の車好き。いわき市から片道38キロの山麓道路を走り抜け、通う日々です。

 伝言館は、反原発運動を半世紀貫いた故早川篤雄(宝鏡寺前住職)さんが一昨年に私財を投げうって建設。1年半後、病床の早川さんから「伝言館を引き継いでくれないか」と頼まれ、「願いをまっすぐ後世に届けたい」と事務局長になりました。

 いわき市で夫とワープロ修理店を営んでいましたが、福島第1原発事故により群馬県へ自力避難。原発事故損害群馬訴訟原告として10年、最高裁までたたかいました。

 いわき市への“再移住”は「苦渋の決断」でした。仲間には「帰還ではなく、新たに福島で原発問題に取り組む」という覚悟を伝えました。

 夫からは「あなたは人間が好きだよね」と言われます。子ども時代から好きな宮沢賢治の「世界がぜんたい幸福にならないうちは個人の幸福はあり得ない」が信条です。

 「被害の実相、司法が退けた国の事故責任、避難の権利など未来への伝言を続けます」。アルプス処理汚染水の放出差し止め訴訟の原告としてもたたかう覚悟です。

 文・写真 伊藤 佑亮

(「しんぶん赤旗」2023年8月24日より転載)