岸田文雄首相は22日、東京電力福島第1原発事故で発生した汚染水(アルプス処理水)に関する関係閣僚会議で、気象条件などの支障がなければ24日に海洋放出を始めると一方的に表明しました。海洋放出に反対の意思を強く表明している漁業者との約束を踏みにじり、内外の不安・反対の声を無視したものです。全国漁業協同組合連合会(全漁連)の坂本雅信会長は同日、声明を発表。「これまで一貫して申し上げてきた通り、漁業者・国民の理解を得られない海洋放出に反対であることはいささかも変わるものではない」と表明しました。
首相は会議で、風評被害対策などについて「たとえ今後数十年の長期にわたろうとも処理水処分が完了するまで、政府として責任を持って取り組む」と述べました。
政府・東電は2015年、福島県漁連に「関係者の理解なしには、いかなる処分も行わない」と約束。政府・東電は、約束を「順守する」と繰り返す一方で、これまで示してきた、今年「夏ごろ」の放出開始方針をなんら変えずに決定に至りました。
首相は廃炉実現のため「処理水の処分は決して先送りできない」と述べましたが、廃炉のために急がれるのは、汚染水を減らす根本対策です。
東電は22日、放出に向けた準備作業に入ったと発表しました。
第1原発では、原子炉建屋に流入した地下水や雨が溶け落ちた核燃料にふれた放射能汚染水が増え続けています。これを多核種除去設備(アルプス)で処理したのが「アルプス処理水」。62種類の放射性物質を放出基準未満に低減できるとされますが、トリチウム(3重水素)は除去できません。現在、敷地内のタンク約1000基にためています。
政府・東電は、海水で希釈し原発から約1キロの沖合に放出する計画です。放出完了には30年程度かかるとみられます。
(「しんぶん赤旗」2023年8月23日より転載)