眼下に広がる穏やかな瀬戸内の海。緑あふれる山々。そんな自然に抱かれた町が揺れています。扱いに困った「ゴミ」を押しつけられようとして▼山口県の最南端にある人口2千人ほどの上関(かみのせき)町。これまで中国電力による原発建設をめぐって町は分断されてきました。さらに、原発で出た使用済み核燃料を一時的に保管する「中間貯蔵施設」づくりも推しすすめられています▼きのうの臨時町議会で建設に向けた調査を容認すると町長が表明。中国電力にも伝えたといいます。役場には反対する町民らが集まり、次つぎと抗議の声を。一部の人間だけで決めるな、核のゴミを持ち込むなと▼「トイレなきマンション」と例えられる原発。使うかぎり増え続ける高レベルの放射性廃棄物をどうするか。その問題が解決されないまま稼働させてきた国の無責任さが付けとなって、上関町をはじめ地方や過疎地に回されようとしています。財源や高齢化対策をエサにして▼原発が国内で使われ始めてからおよそ60年。再処理工場はゆきづまり、核のゴミの最終処分場も決まらない。夢の計画とうたっていた核燃料サイクルそのものが完全に破綻しています。それでもなお岸田政権は原発に依存し、見通しのない「サイクル」に固執しています▼日本は再生可能エネルギーの潜在量が電力量の7倍もあるという再エネの資源大国です。自民党政治が打つ手もなく不安と矛盾を拡大してきた原発推進。それを転換することが、多くの国民の願いでもあるはずです。
(「しんぶん赤旗」2023年8月19日より転載)