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白書が描く経済 GX・・原子力活用・火発延命ねらう

カーボンリサイクルのイメージ(経済産業省のHPから)

 GXはグリーントランスフォーメーションの略とされます。その意味について政府が2月に閣議決定した「GX実現に向けた基本方針」は「産業革命以来の化石エネルギー中心の産業構造・社会構造をクリーンエネルギー中心へ転換する」ことだとしています。

競争力を強化

 環境省の「環境白書」は世界規模での異常気象や自然災害などをあげ、「気候変動問題への対応は今や人類共通の課題」だと指摘、「炭素中立(カーボンニュートラル)」の必要性を強調しています。そのためにGXの推進をうたいます。ただ、GX推進の目的について「我が国の企業が世界に誇る脱炭素技術の強みをいかして、世界規模でのカーボンニュートラルの実現に貢献するとともに、新たな市場・需要を創出し、我が国の産業競争力を強化する」と述べ、企業のもうけを盛り込んでいます。

 「環境白書」はGX実現のために「安定的で安価なエネルギー供給につながるエネルギー需給構造の転換」が必要だとして、省エネの徹底や再エネ利用に加え、「原子力の活用」を掲げました。同時にGXにむけた巨額の投資を「官民協調で実現」するとして、政府が先頭に立って「20兆円規模の大胆な先行投資支援」などを行っていくとしました。

 資源エネルギー庁の「エネルギー白書」はGXについて「脱炭素投資の成否が、企業や国家の競争力を左右する時代に突入している」との認識を表明。GXの加速を「エネルギーの安定供給にもつながるとともに、日本経済を再び成長軌道へと戻す起爆剤」だとしています。

 今後の対応としてエネルギー白書は原子力の活用や水素・アンモニアの導入促進など14分野を例示しました。とりわけ原子力の分野では「国が前面に立って取り組む」ことを強調しています。「原子炉の再稼働」や「次世代革新炉への建て替え」などを盛り込んだほか、「既存の原子力発電所を可能な限り活用するため」として原発の運転期間を60年超とすることを「認めることとする」としました。

 また、水素・アンモニアの導入促進の分野では「化石燃料との混焼」などの開発に取り組むとしました。

足を引っ張る

 文部科学省の「科学技術・イノベーション白書」はGXの目標について「グリーン産業の発展を通じた経済成長へとつながり、経済と環境の好循環が生み出されるような社会」を目指すとしています。そのためにグリーンイノベーション推進基金を活用して技術の社会実装を進めるとしました。

 グリーンイノベーションの一環として科学技術・イノベーション白書は二酸化炭素を分離・回収して再利用する「カーボンリサイクル」を紹介しています。具体的には「火力発電所の排ガスから二酸化炭素の大半を分離・回収」する設備の開発などを促進するとしました。

 GXの名で二酸化炭素を大量排出する火力発電の延命をねらうことは、見せかけの環境投資であり、世界の脱炭素の足を引っ張るものです。

(「しんぶん赤旗」2023年8月15日より転載)