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主張 原発再稼働コスト・・国民への負担押し付けやめよ

 岸田文雄政権が原発再稼働を進めるために、巨額の設備改修費用を電力を使う消費者全体に負担させようとしています。

 原発の設備改修費用の回収をあらかじめ保証することで、再稼働を加速させる狙いです。しかも、そのコストは、新電力を含む全ての電力会社を通じて消費者に押し付けられます。原発再稼働を全国民の負担で進めることなど許されません。

制度の趣旨をねじ曲げる

 経済産業省は7月、来年1月から実施する新制度「長期脱炭素電源オークション」の対象に既設原発を追加する案を、同省の審議会に提起しました。同オークションは、落札された発電施設に対し20年間の収入を保証する制度です。二酸化炭素を排出しない電源への新規投資を促す目的です。原則は新設する設備が対象です。

 先の国会で岸田政権が強行したGX(グリーントランスフォーメーション)脱炭素電源法(原発推進5法)には、「原子力事業者が原子力施設の安全性を確保するために必要な投資を行う」ための環境整備を国の基本的施策とすることが盛り込まれました(原子力基本法第2条)。それを口実に、既設原発再稼働のための大規模改修の投資を、長期脱炭素電源オークションの対象に含めるというのです。

 既設原発を支援しても脱炭素電源は増えません。再稼働推進のためなら、制度の趣旨をねじ曲げても構わないというのは、あまりに乱暴です。

 規制基準に対応するための改修など再稼働に向けた費用は、原発を持つ電力会社11社の合計で6兆円にのぼり、1基平均で2000億円を超えます(「東京」3月10日付)。この費用が大きすぎて再稼働の障害になっているなら、原発に経済性がないということです。

 岸田政権は、原子力規制委員会の審査に合格した原発がある福井、新潟、青森、島根、宮城など各県に政権幹部を派遣し、再稼働への働きかけを強めてきました。しかし、再稼働したのは合格した17基中11基です。長期脱炭素電源オークションで既設原発を支援する今回の動きは、再稼働が思うように進まない焦りの表れです。

 岸田政権は、廃炉を決めた原発敷地内での新規建設の具体化を進める「GX推進戦略」を閣議決定し、新型原発開発の中核企業に三菱重工を選定するなど、原発回帰に突き進んでいます。

 東京電力福島第1原発事故の現実が示すように、原発が抱える危険は日本の社会が受け入れることができないものです。事業環境の整備など手厚い支援までして原発を使い続けることは、国民の利益に反します。原発からの撤退こそ求められます。

日本こそ原発ゼロの道を

 気候危機打開の取り組みは一刻の猶予もありません。二酸化炭素排出量実質ゼロを実現するかぎは、省エネルギーと再生可能エネルギーです。原発に固執すれば、省エネ・再エネの普及拡大を阻害するだけです。

 日本には、建物の断熱化や省エネ設備などエネルギー消費を大きく減らす技術があります。再エネの潜在量は電力需要の7倍以上あるとされる資源大国です。何よりも福島原発事故を経験した日本こそ、原発ゼロによって、気候危機打開をめざすべきです。

(「しんぶん赤旗」2023年8月12日より転載)