原子力白書、革新炉を特集
内閣府の原子力委員会は27日、2022年度版の原子力白書をまとめました。原子力に関する研究開発の特集で、政府が既存原発の建て替えのため導入を狙う「次世代革新炉」を紹介しているほか、原発の運転期間を延長する方針転換に対応する原子炉の経年劣化評価手法の開発を位置づけています。
今回の白書は、岸田文雄政権が原発を「最大限活用」する方針に大転換し、自民党、公明党、日本維新の会、国民民主党などが今年の通常国会で原発推進等5法(GX電源法)を強行成立させたこともあり、原発推進政策を色濃く反映するものになりました。
特集では、革新炉について、小型軽水炉、高温ガス炉、ナトリウム冷却高速炉の3種類の研究開発の状況を紹介。経年劣化評価については、中性子照射による材料の劣化を調べるために建設時に原子炉内に設置した「監視試験片」の再利用に言及しています。
一方、原子力利用に対する「国民からの懸念」を意識し、リスクコミュニケーションなど社会からの信頼獲得のための「社会科学研究」についても紹介しています。
2号機圧力容器内部調査着手へ/福島第1原発
東京電力は27日、福島第1原発2号機の原子炉圧力容器について、内部調査に着手する方針を明らかにしました。圧力容器内を調べるのは1~3号機を通じて初。8月から配管内の放射線量を下げる準備段階の作業を始め、本格的な調査は2024年度後半を予定しています。
調査では、小型カメラを配管に通して圧力容器の内部を確認。溶け落ちた核燃料(燃料デブリ)やその周辺にある構造物の状況などを調べます。
東電担当者は「まだ一度も見たことのない圧力容器の内側を、早期に確認することが一番の目的だ」と強調。2号機では今年度中にも圧力容器を収めた格納容器内からデブリの試験的な取り出しを始める予定で、「取り出しに当たり、重要な情報になる」と説明しています。
圧力容器は、核燃料を収納している鋼鉄製の容器。福島第1原発では1~3号機が炉心溶融(メルトダウン)を起こして溶けた核燃料が圧力容器の底を突き抜け、格納容器底部に燃料デブリが堆積しているとみられています。
(時事)
(「しんぶん赤旗」2023年7月30日より転載)