東京電力福島第1原発事故をめぐり損害賠償を求め賠償が確定した裁判の原告に、東電が社長名の文書で公式に謝罪しました。今週、南相馬訴訟といわき市民訴訟の各原告に相次いで行われました▼社長は「取り返しのつかない被害および混乱を及ぼしてしまったことについて、心から謝罪いたします」と。同様の集団訴訟で最初の謝罪が、昨年6月の福島原発避難者訴訟の原告に対してでした▼その団長の早川篤雄さん(故人)がよく語っていました。「これまで東電に『真摯(しんし)な謝罪』を求めてきましたが、『ご迷惑をかけた』『お詫(わ)びします』という態度。加害者としての謝りがない」と。加害責任を認めての謝罪を拒否してきたというのです▼謝罪は原告が求める一歩でした。謝罪文にはこんな一文も。「高裁判決の判決文のご指摘について…真摯に受け止めており」と。今年3月の判決では、津波対策を先送りした東電の対応を次のように指弾しています▼「経営上の判断を優先させ、原発事故を未然に防止すべき原子力事業者の責務を自覚せず、周辺住民の生命身体の安全や環境をないがしろにしてきたというほかはない」。しかし、こうした指摘の一部も入っていない謝罪文。原告は「真摯な態度と言えない」と語りました▼東電の真摯な対応が問われるのはこれにとどまりません。「アルプス処理水」の海洋放出問題では、「関係者の理解なしには、いかなる処分も行わない」と福島県の漁業者と約束しています。反故(ほご)にすることは許されません。
(「しんぶん赤旗」2023年7月22日より転載)