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原発推進等5法案・・原子力資料情報室事務局長 松久保肇さんの陳述(要旨)

 特定非営利活動法人(NPO)原子力資料情報室の松久保肇事務局長が25日の参院経済産業委員会で行った原発推進等5法案についての陳述の要旨は次の通りです。

 法改正で国や国会は福島の被災者の声に全く耳を傾けてきませんでした。国策民営の果てにあったあの事故から12年たった今でも故郷に帰れない人々が数万人いる中で非常に大きな問題です。

 世界気象機関の最新の報告書によれば、今後5年間で世界の平均気温が産業革命前と比べ1・5度上がる確率は66%とされており、極めて危機的な事態です。G7(主要7カ国)で2035年までに電力部門の完全、または大部分の脱炭素化が合意されています。

 原発の建設期間は長期化傾向にあります。政府は30年代前半に革新軽水炉の建設開始を計画していますが、35年の脱炭素化には原発新設は全く役に立ちません。既設原発にも多くの問題があります。使用済み燃料貯蔵能力は現状のままなら近い将来限界を迎え、再稼働しても数年で止まってしまいかねません。

 原発が単にCO2(二酸化炭素)を排出しないから脱炭素だというのは誤りです。安全性、原発の温排水などによる環境影響などが考慮されるべきです。

 原子力政策は高い目標を立てては失敗を繰り返しています。法案は、原発推進を国の責務だとしていますが、これでは政策の柔軟性を失うことにつながります。原子力という単一の電源にこのような責務を明記する必要は全くないと考えます。もう原子力に政策資源を投資、浪費している余裕はないと考えます。

 この12年間、多くの原発が稼働しないまま、維持費は電気料金に計上され消費者が負担しています。原発で、この間発電しなかった事業者の原発維持費は12・6兆円です。また、原子力の発電コストは上昇しています。以前から、電力会社は原発の巨額の新設コストを負担できないと言っており、経産省は、建設費などを事業環境整備だと称して消費者に転嫁する方針を審議会などで示しています。

 国のエネルギー関連の研究開発支出を見ると、1974~2021年の累計で16・6兆円、うち原子力関連が11兆円と、圧倒的に原子力が優遇されてきました。今後、政府は原子力への支出を増やす方針ですが、原子力にそこまでの価値があるのか考えるべきです。

(「しんぶん赤旗」2023年5月31日より転載)