不正侵入を検知する設備の損傷など核物質防護上の重大な不備が相次ぎ、運転禁止命令が出ている東京電力柏崎刈羽原発(新潟県)。原子力規制委員会が17日、同原発を調査した項目の一部で「是正が図られているとは判断できない」とする検査報告書を了承し、検査継続を決めました。
不祥事を受け、規制委の事務局である原子力規制庁に追加検査チームが設置されたのは2021年4月。今年4月まで、事実関係の調査や東電の改善措置の状況をハード面とソフト面で確認する検査を行いました。
検査に必要な時間を当初のべ約2000時間としていましたが、3475時間かかっています。
報告書は不祥事が全社的な問題かどうかについて「柏崎刈羽原発固有の問題」と判断。
設備の損傷問題については、全社的なコストダウン活動の一環として行われた「カイゼン活動」との関連を指摘。核物質防護設備をリースから買い取りに切り替えた際、保守管理を担当する協力会社から設備の機能喪失時の復旧が遅れるとの懸念があったにもかかわらず、懸念に対する検討をしなかったなどとしました。ただ、同じ時期の他の6件の「カイゼン活動」対象事業については「不適切なコストダウンの指示」などの「形跡はなかった」としています。
報告書は、▽侵入検知器が雪などに反応する警報を18年比で10分の1に減らすという目標に到達していない▽核物質防護について審議する場で代理出席者が多い場合に議論が低調―など4項目で「是正が図られているとは判断できない」としています。
原発動かす資格ない
新潟大学名誉教授 立石雅昭さん
検査継続は当然だと思います。しかし、柏崎刈羽原発の運転禁止命令が出てからすでに2年です。命令が出た時もそうですが、それから2年たっても十分に改善の対応ができないということ自体、東電に危険な原発を動かす能力・資格があるのかどうかが問われる問題です。能力も資格もないことを改めて示しているのです。そのことを政府も経済産業省も、規制委も認識するべきです。
同原発を抱える柏崎市や新潟県がこの事態を受けてどう発信するのか。私は、県民、市民を守る立場に立つなら、東電に即、廃炉を決めろというべきだと思います。
問題は非常に深刻です。原発を扱う上で最も基本的な核物質防護の意識の低さや対応のひどさが、はっきりしたのですから、検査継続にとどまらず、東電に原発を動かす資格がないことをよく考える必要があります。
柏崎刈羽原発の核物質防護などめぐる動き
2017年12月 6、7号機 新規制基準「合格」
20年9月 他人のIDカードで中央制御室に不正侵入
21年1月 基準に基づく「安全」対策工事完了と発表。その後、工事の「未完了」や工事の不備相次ぐ
同 侵入検知の設備の故障が判明。機能喪失は最長11カ月
4月 規制委が運転禁止命令
(「しんぶん赤旗」2023年5月18日より転載)