日本共産党の岩渕友議員が10日の参院本会議で行った原発推進等5法案に対する質問(要旨)は次の通りです。
法案は、脱炭素やロシアのウクライナ侵略によるエネルギー危機を口実に、東京電力福島第1原発事故の反省も教訓も投げ捨て、原発回帰へと大転換するものです。
原発事故から12年余りたった今も、原子力緊急事態宣言はいまだ解除されず、ふるさとに戻ることができない方々は8万人を超えるといわれています。福島県内はもちろん全国で、「事故をもう忘れたのか」という声があがっており、断じて許されません。
この深刻な事故をうけて、原子力規制委員会が設置され、安全規制として、運転期間は原則40年、例外的に一度に限り20年延長できると原子炉等規制法(炉規法)が改正されました。
ところが法案は、運転期間を制限する条文を炉規法から削除し、推進側である経済産業省所管の電気事業法に移すとしています。山中伸介原子力規制委員長は、「運転期間の規定は安全規制ではない」という誤った答弁を繰り返しています。これは規制委の独立性に重大な疑念を抱かせ、炉規法改正時の解釈を根本的にねじ曲げるものではありませんか。さらに、経産相の認可で20年以上の延長を可能とし、延長回数の限度はありません。
原子力基本法の改悪は極めて重大です。原発を電源の選択肢として活用し続けることを国の責務として新設し、原発の推進を事実上規定しています。さらに、国の基本的施策として、原発技術の維持と開発の促進、原子力産業基盤の維持強化、原子力産業の安定的な事業環境の整備なども行うべきとしています。原子力産業を政策的に保護し、将来にわたって原発を活用するための法的な枠組みをつくることになります。
原発事故の最大の教訓は、原発を推進する経産省の中に、規制する役割をもった当時の原子力安全・保安院があったこと、規制する側が電力会社に取り込まれる「規制のとりこ」の構造に陥っていたことにあります。ところが、原発の運転期間をめぐり、資源エネルギー庁と原子力規制庁が非公式に面談を重ねていたことが明らかとなりました。推進による規制への介入に他なりません。
これまで政府は、原発の依存度は低減する、新増設など想定していないと述べてきました。ところが、国会と国民にまともな説明もないままであり、立法過程をみても原発事故の反省と教訓をないがしろにするものです。
「再生可能エネルギーの最大限導入」を掲げながら、稼働していない原発を優先する送電網の利用ルールになっており、大手電力会社は再エネの出力抑制を繰り返し、再エネの導入を阻み続けています。原発を最優先とするルールこそ抜本的に変えるべきです。
世界の流れとなっている原発からの撤退、石炭火力発電の全廃と徹底した省エネ、再エネの大量導入で脱炭素を実現するべきです。
(「しんぶん赤旗」2023年5月11日より転載)