原発の最大限活用のための原発推進等5法案(GX電源法案)が27日の衆院本会議で与党などの賛成多数で可決されました。原発回帰へと大転換する重大法案なのに、審議はわずか1カ月足らずです。「東京電力福島第1原発事故を忘れたのか」と怒りの声が広がっています。参院で徹底審議の上、必ず廃案に追い込みましょう。
利用の固定化・永続化
法案は、原子力基本法を改定し、「国の責務」として電力の安定供給や脱炭素のために原発を活用することを明記します。▽技術・人材など産業基盤の維持・強化▽研究開発成果の円滑な実用化▽事業環境の整備―など原発業界への支援を定めた「基本的施策」の条項も新設します。原発業界の要求を丸のみです。既設原発の活用にとどまらず、新規建設を含め将来にわたり原発利用を固定化・永続化するものです。
原発の運転期間を原則40年・最長60年に制限する規定が、原子炉等規制法から削除され、電気事業法に移されます。40年を超える運転は、電力安定供給等の観点から経済産業相が認可することになります。運転期間制限は、経年劣化による「リスクを低減するため」(野田佳彦首相=当時、衆院本会議2012年5月29日)に、福島原発事故後に導入されたものです。制度の性格が規制から推進へと逆転してしまいます。
しかも、原子力規制委員会の審査などで止まっていた期間は、運転期間に算入されません。これにより、ほとんどの原発が70年を超えて運転可能になります。政府も国会審議の中でそのことを認めました。老朽化リスクを無視した制度づくりに他なりません。
法案が、原発を推進する官庁である経産省資源エネルギー庁の主導で、原子力規制委の事務局である原子力規制庁との密談で準備されたことも明らかとなりました。極めて深刻な事態です。規制と推進の分離・独立は、福島原発事故の痛苦の教訓です。規制の独立が踏みにじられれば、「安全神話」から脱却できなかった過ちを繰り返すことになりかねません。
法案には「安全神話に陥り東京電力福島第1原発事故を防止することができなかったことを真摯(しんし)に反省」との文言もあります。そうであるならば、原発の危険から国民を守るために、原発ゼロをめざさなければなりません。日本世論調査会の調査(3月4日公表)では、原発の最大限活用を「評価しない」64%、建設推進に「反対」60%などとなっています。
岸田文雄政権は福島原発事故の教訓と国民世論に逆らうのでなく、原発回帰を断念すべきです。
再エネこそ脱炭素の力に
岸田政権は、脱炭素やロシアによるウクライナ侵略に伴うエネルギー危機を口実に、原発回帰を進めようとしています。
脱炭素やエネルギーの安定供給というなら、再生可能エネルギーを最大限活用するべきです。21年度の電力量での再エネ比率は2割超です。しかし、再エネには現在の電力使用量の7倍を超える潜在的な発電の力があります。この可能性を十分にいかす時です。
今こそ、省エネと合わせ、地産地消型で地域経済活性化に資する再エネを最優先で推し進め、多くの国民が願う原発ゼロへと転換することを強く求めます。
(「しんぶん赤旗」2023年4月29日より転載)