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すいよう特集 全原発停止実現 ドイツ再エネに本気・・

 国民の粘り強い反原発運動が後押ししました。ドイツで15日、国内すべての原子力発電所の稼働が停止しました。1998年に発足した社民党・緑の党の連立政権が、脱原発を政権公約に掲げてから25年。政府と電力業界との合意や議会での法制化を通じて実現にこぎつけました。脱原発の方針は、政権交代や経済危機、ロシアによるウクライナ侵略に伴うエネルギー危機を乗り越えて貫かれました。(ベルリン=桑野白馬 写真も)

 最後の原発3基の停止について、レムケ環境相は、「原発のリスクは制御することができないので、脱原発によってわが国はより安全となる」と語りました。

 ドイツでは原発建設や核燃料・核廃棄物の輸送などに対する大規模な反対運動が発展。1981年には、北部での原発建設に10万人が反対デモを行いました。86年のチェルノブイリ原発事故を経て、98年、社民党と脱原発・環境保護運動から生まれた緑の党が連立政権を組み、原発の新規建設の停止と、稼働していた17基の段階的廃止を決定しました。

 同時に再生可能エネルギーへの大規模な転換を進めました。2000年制定の再生可能エネルギー法は、自然エネルギーによる発電の「固定価格買い取り制度」を導入し、普及を促進。福島第1原発事故後の11年7月の改正では、電力に占める再生可能エネルギーの割合を2030年までに50%、50年までに80%以上にする目標を定めました。

 昨年8月には、「過去数十年間で最大規模の自然エネルギー拡大加速パッケージ」として一連の法律を制定。自然エネルギーの拡大スピードを3倍にし、30年までに電力消費に占める再生可能エネルギーの割合を80%、35年までにほぼ100%にすることが目標となりました。

 新たな法律には「自然エネルギーの設備は、最優先の公益であり、公共の安全に資する」との条文が追加されました。

 昨年2月にロシアがウクライナ侵略を開始し、対ロシア経済制裁でロシアからの天然ガス供給が止まり、エネルギー供給への不安が高まりました。社民党、緑の党、自由民主党の3党連立による現政権は、年末に停止するはずだった残る3基の原発を4月15日まで稼働延長することを決定。しかし将来への影響を考慮し、それ以上の延長はしませんでした。

 欧州連合(EU)は、気候変動対策を理由に、原子力を「クリーン」なエネルギーに指定して投資を促進する政策をとっています。これにはドイツやオーストリアなど批判的な国が多く、原発推進派の諸国と対立しています。

 メルケル前政権時代、福島第1原発事故を受けて脱原発の勧告を出した「倫理委員会」の委員、ミランダ・シュラーズ氏(ミュンヘン工科大教授)は、ドイツの脱原発が他国にとって「将来の持続可能な国づくりのモデルとなる。他国にも伝えていくことができる」と語ります。

 核戦争防止国際医師会議(IPPNW)ドイツ支部のアンゲリカ・クラウセン代表は、「原発推進ロビーの宣伝に惑わされず、現実を見ることが必要だ。脱原発は、ドイツのような工業先進国でも再エネへの移行が可能だと示す良い機会になる」と語りました。

(「しんぶん赤旗」2023年4月19日より転載)