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脱原発のドイツ どうやって決めた・・気候保護=温暖化対策を強調/安定供給・雇用拡大への確信と根拠

2011年3月の福島第1原発事故を受け、ドイツ政府は3ヵ月の検討を経て、2022年までの原発からの全面撤退を決めました。なぜドイツで脱原発の判断が行えたのか。その先に、ドイツは何を見ているのか。ヒントとなる本をいくつか紹介します。

大規模な転換・・「ドイツ脱原発倫理委員会報告・・社会共同によるエネルギーシフトの道すじ」(同倫理委員会著:大月書店)

13-10-20rinri 2022年までの脱原発の決め手となったのは、ドイツ政府が設置した安全なエネルギー供給に関する倫理委員会の報告です。それを翻訳して紹介したのが、同倫理委員会著『ドイツ脱原発倫理委員会報告・・社会共同によるエネルギーシフトの道すじ』(大月書店)です。ドイツではたんに原発をなくすだけでなく、これまでの社会のエネルギーシステムの大規模な転換をおこなうことが意図されています。その際、「気候保護」、つまり温暖化対策を着実に進めることが繰り返し強調されています。

「エネルギーの安定供給は、気候保護という目標を損なうことなく、商工業分野での雇用を拡大しつつ、電力不足にもおちいらず、また原子力工ネルギーで生産された電力を他国から輸入することなしに、達成することができ」る。そういう確信と、その根拠となるさまざまな技術の位置づけを示し、そのための枠組み作りを提案することが、本書の骨格です。そしてその決断に責任を負い、実行するのが市民一人ひとりだと強調し、「エネルギー大転換全国フォーラム」という継続的な公開討議を大転換の柱として提起している点に、ドイツの民主主義の力強さを感じます。

本書の冒頭には倫理委員会委員のミランダ・シュラーズからの13ページにわ
たる「メッセージ」が書かれています。ドイツと比較しながら、震災後すでに日本でも省エネが急速に進んでおり、日本にも脱原発の大きな可能性があると指摘しています。

政権握るまで・・「なぜドイツは脱原発を選んだのか‥巨大事故・市民運動・国家」(川名英之著:合同出版)

長年ドイツの環境政策を取材してきた川名英之著『なぜドイツは脱原発を選んだのか‥ 巨大事故・市民運動・国家』(合同出版)は、原発開発の初期からの政府の原発・エネルギー政策と脱原発運動の歴史を描いています。立地予定地占拠など激しい原発建設反対行動が多くの地で圧倒的な警察力に抑え込まれる中で緑の党が作られ、紆余曲折を経ながら連邦政府の与党となり、脱原発が進んでいくプロセスが興味深い。

ドイツの最新の動きが具体的に・・「脱原発から、その先ヘ─ドイツの市民エネルギー革命」(今泉みね子著:岩波書店)

20年以上ドイツ在住で環境問題を見てきた今泉みね子著『脱原発から、その先ヘ─ドイツの市民エネルギー革命』(岩波書店)は、再生可能エネルギー中心の社会をつくるためのドイツの最新の動きが具体的に書かれています。本書に書かれる
草の根のエネルギー協同組合や合資会社づくりの動きは、分散して市民の近くに導入される再生可能エネルギーにふさわしい導入形態であり、日本でも参考にすべきです。

(佐川清隆=さがわ・きよたか自然エネルギー研究者)

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