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経済アングル 原発安上がりのウソ

 大手電力会社が政府に申請している電力値上げをめぐり「原子力発電活用で電気料金は安くなる」などといった議論がなされています。産経新聞は1月27日の社説で「原発を広く活用することで家計や企業の負担を軽減」などと述べています。

 原発が低コストにみえるのは、発電量当たりの燃料費が安いからです。しかし他の費用を合わせれば安い電源とはいえません。2011年の東京電力福島原発事故による賠償金や除染費用は電気料金に上乗せされており、すべての電力利用者の負担です。こうした事故リスク対応や建設費などを含めた原発の発電コストは、資源エネルギー庁の試算によると、30年段階で1キロワット時当たり11・7円以上。事業用太陽光発電の同8・2~11・8円や住宅太陽光発電の8・7~14・9円と同水準です。

 この原発コスト試算に盛り込まれている使用済み燃料処分費は技術的にも未確立のもので、実際にはいくらかかるかすら分かりません。しかも算出の前提は標準設備利用率70%、稼働年数40年という条件であり、22年の原子力発電設備利用率18・7%と比較しても非現実的な数字です。原発の発電コストは資源エネルギー庁の不十分な試算よりも、さらにかかっていることは確実です。

 足元の電気料金の高さに耐えかね、「原発は安上がり」などという原発利益共同体の口車に乗って、原発の再稼働や新増設を行えばさらなる重大事故が起こる危険性は高まります。原発事故が再び起きたら、ばく大な費用負担が発生するだけでなく、多くの人が故郷や生業を失うことになります。事故を教訓にしない国として国際的な信頼も失います。経済的・政治的損失は計り知れません。

 (清水渡)

 (2023・3・28)

(「しんぶん赤旗」2023年3月28日より転載)