漁業復興の前提壊す
東京電力福島第1原発事故でタンクにたまっている高濃度のトリチウム(3重水素)を含む汚染水(アルプス処理水)をテーマに「ふくしま復興支援フォーラム」が16日、開かれました。福島の漁業を支援してきた林薫平・福島大学准教授(食料資源経済学)が報告。政府・東電による性急な海洋放出決定は、漁業者たちが“ガラス細工”のように積み上げてきた復興の前提を壊すものであり、放出計画を凍結し、根本的な議論をすべきだと訴えました。
林さんは、福島の漁業者たちが試験操業から試行錯誤しながらコツコツと積み上げてきた努力と苦労を紹介。海に漏れ続けた汚染水をめぐって、2015年に海と陸を遮断したことでようやく漁業復興の前提が整ったことを強調しました。
その対策の過程で政府・東電がアルプス処理水について「関係者の理解なしには、いかなる処分も行わない」と漁業者に約束したと指摘。海は誰のものかということを考えたときに、「希釈して放出すれば一件落着」という考えに対して、海とともに生きる人たちが抵抗を感じるのは当然だと述べました。
林さんは、政府・東電が掲げる「復興と廃炉の両立」について言及。廃炉側の都合だけで物事が進んで地元がその説明を聞かされるのではなく、復興側の主体である福島県民が応分の意思決定権をもつ「円卓会議」の設置を提案しました。
海洋放出反対の署名運動に取り組む宍戸義広さんが、署名は23万5000人分を超えて集まりつつあり、要請行動を計画していると報告しました。
(「しんぶん赤旗」2023年3月18より転載)