東京電力福島第1原発事故から12年を迎えました。岸田文雄政権が原発の最大限活用と新規建設などを打ち出したことに対し、全国各地で「福島を忘れるな」「原発ゼロの日本」を掲げた集会などが開催されています。
日本世論調査会の調査(4日公表)では、原発の最大限活用を「評価しない」64%、建設推進に「反対」60%などで政府方針に反対が多数です。国民の世論と運動で、岸田政権に原発回帰を断念させましょう。
日本を危険にさらす法案
岸田政権は、原発に回帰するための法案を国会に提出しました。原則40年・最大60年という運転期間の規定を、原発を規制する法律から電気事業法に移し、経済産業相が電力安定供給等のためと認めれば、原子力規制委員会の審査などで止まっていた期間分は60年を超えて運転できるとします。
運転期間制限は、福島原発事故後に、老朽化による設備の劣化などを考慮して導入されました。運転期間延長が、原発のリスクを高めることは明らかです。
法案では、原子力基本法に、電力安定供給や脱炭素に資するよう原子力を利用する国の責務を書き込みます。気候危機やロシアのウクライナ侵略による「エネルギー危機」に乗じて、新規建設など将来にわたる原発活用のための法的枠組みをつくるものです。
これは、甚大な被害をおよぼし、いまも収束が見通せない福島原発事故の反省も教訓も投げ捨て、国民の生命と財産、日本の経済と社会を危険にさらす道です。原発のリスクを軽視することは許されません。
エネルギーの安定供給にとって重要なのは、自給率の向上です。核燃料は輸入資源であり、自給率向上には何ら貢献しません。国内資源である再生可能エネルギーの利用拡大を進めるべきです。政府の試算では、国内の再エネの潜在能力は、現在の電力使用量の7倍以上もあります。
気候危機打開のためには、省エネルギー対策と再エネの普及・拡大こそ重視されるべきです。ところが、供給力が一時的に需要を上回る時に、太陽光発電などの出力を抑えて原発の運転を維持するという運用が行われています。原発という障害をなくしていくことが、再エネ拡大にとって不可欠となっています。
岸田政権は、福島原発事故に伴う汚染水(ALPS処理水)をこの春か夏にも海洋放出しようとしています。先の日本世論調査会の調査では9割以上が「風評被害が起きる」と答えています。
福島をはじめ全国の漁協が、事故後に積み重ねてきた漁業復興の努力が無になりかねないとして、「断固反対」を表明しています。被害者にさらなる被害を押し付けることがあってはなりません。
力を合わせて「ゼロ」へ
福島原発事故では、多くの人が避難を強いられ、暮らしの土台である地域の産業と文化が破壊されました。いまもなお多くの人が苦しんでいます。帰還の見通しが見えない地域もあります。このような危険をはらむ原発は、社会とは共存できません。
目前に迫った統一地方選でも原発は重要な争点です。岸田政権の原発回帰にストップをかけ、「原発ゼロ」の日本をつくりましょう。
(「しんぶん赤旗」2023年3月12日より転載)