「束ね法案」で政策大転換
政府は28日、原発の「60年超」運転を可能にするための法案を閣議決定しました。2011年の東京電力福島第1原発事故を踏まえた「原則40年、最長60年」と定めた運転期間の現行ルールを変える内容。しかし、国民には一切の説明もなく、市民団体からは「事故の教訓を放棄した」などの抗議の声が上がっています。
法案は、電気事業法(電事法)と原子炉等規制法(炉規法)、再生可能エネルギー特別措置法、使用済み核燃料再処理法、原子力基本法の五つの法律を一本化した「束ね法案」。原発を最大限活用する方針への大転換です。
法案では、原子力規制委員会が所管する炉規法で規定された原発の運転期間ルールを削除。経済産業省が所管する電事法に移管し、新たに明記。「原則40年、最長60年」を維持しつつ、規制委による審査や司法判断で停止した期間を運転期間に含めない仕組みにします。たとえば審査で10年間停止した場合、運転開始から70年まで運転が可能になります。
この運転延長は、原発を推進する経産相が認可します。
しかし延長後の規制の詳細な内容は、規制委で検討が始まったばかりで、60年超の運転を認めることだけを先行させました。
このほか、原子力基本法では、原発による電気の安定供給などは「国の責務」と明記しています。
60年を超える原発の運転をめぐっては、運転期間の規定を削除する案に規制委の石渡明委員が「科学的技術的な新知見に基づくものではない」「安全側への改変といえない」などの理由で反対。規制委は多数決で了承した経緯があります。
審議最小限 国会を強行突破か・・市民団体 抗議の緊急会見
政府が原発の60年超運転ができるなどの「束ね法案」を閣議決定したことを受け、原発問題や環境問題に取り組む市民団体が28日、衆院議員会館と各地の参加者とをオンラインで結んで、抗議の緊急記者会見を開きました。
会見で、国際環境NGO「FoE Japan」の満田夏花事務局長は、五つの法案を束ねて国会に提出することについて「国会での慎重な審議を妨げて、審議を最小限にして数の力で国会を強行突破しようという思惑が透けてみえる」と批判しました。
脱原発を掲げるNPO法人・原子力資料情報室の松久保肇事務局長は「なぜ今、原子力政策を進めなくてはいけないのか全く説明していない。ウクライナ情勢、資源価格高騰に便乗して原子力政策を推進させようとするもの」と指摘しました。
また松久保氏は、福島第1原発事故の教訓が規制と推進の分離だったと強調。今回の政策変更で「規制と推進の一体化を見せつけられた」と述べました。
原子力市民委員会の原子力規制部会コーディネーターの菅波完氏は「岸田政権も原子力規制委員会もまともに議論していない。市民からの声を聞こうともしていない。このような状況の中では、原発のような極めて大きな危険性を伴うようなシステムは使うことはできない」と発言しました。
会見には「原子力規制を監視する市民の会」、「老朽原発40年廃炉訴訟市民の会」、「原発反対刈羽村を守る会」も参加しました。
(「しんぶん赤旗」2023年3月1日より転載)