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解説 原発60年超運転容認・・「法案提出の期限あった」 規制委の存在意義 問われる

 原子力規制委員会の今回の決定は、東京電力福島第1原発事故後の原発政策を大きく転換する岸田政権の「GX(グリーントランスフォーメーション)実現に向けた基本方針」に対応した重大な変更です。にもかかわらず委員5人全員の賛同を得られず多数決で決められました。賛成しながらも「決を採って進んでしまっていいのか、疑問を感じる」と述べる委員もいました。

 新たな制度は、運転開始から30年以降は10年ごとに規制委が認可する制度を導入し、原発の60年超運転を実質容認するもの。原子炉等規制法(炉規法)から原則40年、最長60年の運転期間の規定を削除する法案も了承しました。

 唯一反対を表明した地震・津波担当の石渡明委員は、新制度には「60年目に何をするか決まっていない」と指摘。なかでも、審査をしていれば運転期間が減らない仕組みに「安全にかかわる」と反対しました。石渡氏は、電力会社の不備で審査が長引くのは電力会社の責任なのに、それで運転期間が延びるのは「非常におかしい」と述べ、「審査している人間として耐えられない」と発言しました。

 賛成した杉山智之委員から議論の進め方に疑問が出されました。

 「われわれは独立した機関であって、われわれの中でじっくり議論すべきだった」

 運転期間をめぐって規制委の議論が始まったのは山中伸介委員長が検討を指示した昨年10月初めでした。しかし、事務局である原子力規制庁と、原発の推進官庁の経済産業省資源エネルギー庁(エネ庁)が、その2カ月以上前の同7月末から9月下旬まで7回にわたって面談し、法整備の具体的な検討をしていたことが明らかになっています。

 面談の事実は規制委にも報告されないまま。規制庁は「協議、調整、すり合わせをしていなかった」と説明しますが、エネ庁側の資料は公開しませんでした。

 また、規制庁内で検討過程の複数の法改定案についての資料でも「メリット」「デメリット」の項目が「国民を混乱させる」などとして黒塗りでした。面談が繰り返し行われたことについて市民団体から「原子力の推進と規制の一体化ではないか」と指摘されています。

 今回の決定について山中伸介委員長は「法案を提出しなければならない期限があった」と述べています。規制側が推進側の動きに合わせて対応したことになり、規制委の存在意義が問われます。(「原発」取材班)

(「しんぶん赤旗」2023年2月15日より転載)