原発回帰 閣議決定・・「GX基本方針」 財界要求丸のみ
政府は10日、エネルギーの安定供給や気候危機対策を口実に原発の新規建設や60年を超える運転を認めるなどを盛り込んだ「GX(グリーントランスフォーメーション)実現に向けた基本方針」を閣議決定しました。
東京電力福島第1原発事故後、原発の新増設を「想定していない」としてきた政府の立場を投げ捨て、原発回帰に政策を大転換するものです。事故の教訓を忘れ、国民的な議論もなく財界・産業界の要求丸のみの乱暴な決定に、市民などから「許せない」と抗議の声が上がっています。
今後、政府は国会に電気事業法などの関連法案を国会に提出します。
基本方針は、原発の新規建設について、その対象を「廃炉を決定した原発の敷地内」での「建て替え」などと表現。その他の建設も「今後の状況を踏まえて検討していく」としています。
運転期間については、福島第1原発事故を踏まえてつくられた現行の「原則40年」としたルールを変え、審査などによる長期停止期間を運転年数から除外し、現行「最大60年」を超える運転を可能にします。仮に審査で10年停止していれば、70年まで運転できることになります。
政府はまた、原発の使用済み核燃料から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分の選定に関する閣僚会議を開き、「政府の責任」を明記した基本方針の改定案をまとめました。GX実現の基本方針で将来にわたって核のごみを増やし続ける一方、改定案は、自治体が選定にかかわる調査を受け入れる前から検討を申し入れるなど、上からの動きを強めようとしています。
「断固反対」 官邸前で市民ら
岸田文雄政権が新たな原発推進政策を含むGXの基本方針を閣議決定したことを受け10日、原発推進ノーの声をあげようと市民ら100人が首相官邸前で抗議集会を行いました。国際環境NGO「FoE Japan」、さようなら原発1000万人アクション実行委員会などが呼びかけました。
FoE Japanの満田夏花事務局長は、原発は新設にも、再稼働にも巨額の費用がかかると指摘したうえで、「全く経済合理性のない原発、原子力産業をただただ維持するためだけに、今回のGX方針によって、国民の公的リソースがつぎ込まれている。未来世代のために、今回のGX方針に断固として反対したい」と訴えました。
全国保険医団体連合会の住江憲勇会長は、「核の問題について、(問題発生時の)治療法は今の医学にはなく、無害化はできない。そんな核は、人類は持つべきではない」と強調。また、「東京電力福島第1原発の事故から12年になるが、事故の原因は究明できていない。その中で原発を再稼働すれば、次の事故は必ず起きる」と語り、岸田政権の方針に抗議する声をあげていこうと呼びかけました。
参加者らは、首相官邸に向かって、「原発回帰反対」「運転規制上限撤廃反対」「新増設反対」などとコールしました。
(「しんぶん赤旗」2023年2月11日より転載)