原発の60年を超えた運転に対応した新たな制度案を決めようとした8日の原子力規制委員会。委員の一人が「私はこの案には反対いたします」と表明しました。このため、決定は後日に持ち越されました▼反対したのは地震や津波対策の審査を担当する石渡明委員。地質学者で日本地質学会会長を務めました。提案された制度は、「原則40年、最長60年」という現行ルールを改め、60年を超える運転を可能にする内容です▼原発の運転年数から審査などで長期停止した期間を除外して、60年を超えても運転ができるよう法改定をねらう岸田政権の、原発回帰の動きに呼応したものです。委員はこう発言しました。新たな制度は「科学的技術的な新知見に基づいた改変ではない」▼さらに運転期間の制限を法律からなくすことは「安全側への改変とはいえない」と言い切りました。現行ルールが定められたのは東京電力福島第1原発事故の教訓を踏まえ、安全にかかわる問題としてつくられたものです。老朽原発の原子炉は高エネルギーの中性子を浴び続け粘り強さを失いもろくなり、事故の危険が増すからです▼委員の心配は政府の法改定にも及びました。審査に時間がかかればかかるほど、その分だけ古い原発を将来動かすことになるというのです。現行制度では廃炉になるはずの原発があちこちで動く…▼制度案に対する一般からの意見に「規制委の責任放棄だ」とありました。世界有数の地震・津波国の日本。原発回帰への大転換は許されません。
(「しんぶん赤旗」2023年2月10日より転載)