東京電力福島第1原発事故を教訓に、脱原発を求めて11年前から始めた秋田駅前での「さよなら原発 県民アクション」。岸田首相が老朽原発の運転延長を認める方針を決めた翌日の昨年12月23日、「勝手に決めるな」とコールしながら、雪が積もる中心街をデモ行進し、2023年のたたかう決意を固めあいました。(阿部活士)
道行く市民にハンドマイクでアピールするのは80代の遠藤嘉恵さんです。「『赤旗』をよく読んで検討した」という手書きのメモを読み上げます。
「岸田内閣は財界からの要望どおり、原発再稼働の早期開始など原発回帰の方針を決定しました。東電の事故の反省も教訓も投げ捨てた方針に強く抗議し、撤回を求めましょう。再生可能エネルギーの本格活用と省エネで安心・安全なエネルギー政策を求めましょう」
遠藤さんは、当初から参加。その思いについて、「人生や故郷を破壊された福島の人たちの苦しみや悩みを思うとき、その怒りが常にありますね」と話します。
高坂(こうさか)昭一さん、高坂裕子さん夫妻も当初からデモに参加しました。「原発事故は人災です。人間が作ったものですが、事故を起こし、制御できない、人間の手に負えないものだとわかりました。なくすしかありません」と昭一さん。
高坂さん夫婦は、被災者支援のボランティア活動や年金者組合の交流ツアーに毎年行きました。
「除染した草木を詰めたゴミ袋・フレコンバッグが山積みされていました。持参した放射能の線量計で測ると濃いところと薄いところがあって、放射能汚染を体感しました」と裕子さんが言えば、「実際に現場を見ることが行動を続けるエネルギーになる」と昭一さんが続けました。
同じ地域なのに
県民アクションは、2012年7月に結成された「脱原発と自然エネルギーの導入をめざす秋田県民の会」の賛同者らが「気軽に行動しよう」とつくられました。同年8月24日に初めてデモ行進しました。
「10年以上続けてきたことが『19日行動』をはじめ、市民が主権者として声をあげることを当たり前にしてきたと思う」。こう話すのは、責任者の鈴木政隆さんです。鈴木さんも福島の現地を視察したことが継続する力になったと話します。「同じ地域なのに、道路ひとつ隔てて柵が立ち、立ち入り禁止地区にされていました。ショックでした。青森の大間原発に反対する『あさこはうす』にも行き、たたかう元気をもらいました」と振り返ります。
地産地消の中身
岸田政権は、古い原発の再稼働などを中身とするGX(グリーントランスフォーメーション)実行会議で基本方針を決定し、関連法案を通常国会に提出する構えです。
「子どもたちのため、原発を未来に残すな。原発をなくすのはおとなの責任だ」と行動してきたと話すのは、田口良実さん(62)です。「23年こそ正念場です。岸田さんは、憲法に基づき、主権者で当事者のわれわれの声を聴けと言いたいし、声をあげていきたい」
鈴木さんは、能代市、秋田市ですすむ巨大洋上風力発電の商業化も地元の課題と話します。「洋上風力発電は、外国や東京の資本が中心です。エネルギーの“地産地消”の中身が問題です。低周波被害や漁業への影響などもあります。脱原発とともに地産地消の再生可能エネルギーのあり方などを深めて、運動の力にしていきたい」と意気込みます。
(「しんぶん赤旗」2023年1月7日より転載)