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老朽原発 60年超運転へ大転換・・規制委 概要案了承

運転開始から47年以上になる関西電力高浜原発1、2号機(手前)=福井県高浜町

 原子力規制委員会は12月21日、政府が最長60年とされている原発の運転期間をさらに延長させる方針を検討していることに対応し、60年超の運転を可能にする規制の概要案を了承しました。原発推進官庁の経済産業省の動きに迎合する形で、東京電力福島第1原発事故の教訓を踏まえた原子力規制を大きく転換することになります。

 事故後に改定された現行の原子炉等規制法(炉規法)では、原発の運転期間は運転開始から原則40年とされ、規制委が認めれば、さらに最長で20年の延長を1回だけできることになっています。

 今回の概要案は、運転開始から30年以降運転する場合、10年ごとに劣化管理のための計画「長期施設管理計画」を事業者が策定し、規制委の認可を得るとしています。

 また、すでに30年を超える原発については、新制度施行までに「長期施設管理計画」の認可申請することができ、規制委が新制度と同様の要件を満たすものについて認可し、新制度の施行日に新制度下での認可とみなすとしています。

 一方、60年以降の点検内容については今後議論するとしています。

 規制委は概要案について1カ月間の意見募集を行うとともに、原子力事業者との意見交換も実施。結果を踏まえて炉規法の改定案を策定し、来年の通常国会への提出を目指すとしています。

 経産省は今月16日、運転期間から審査などによる長期停止期間を除外し、実質的に60年を超える運転を認める方針を決めています。

解説 規制委 概要案了承

原発推進を後押し

 原子力規制委員会が、東京電力福島第1原発事故の教訓を踏まえた「原則40年、最長60年」という原発の運転期間のルールを変更し、政府・経済産業省がねらう60年超の運転に対応する新たな規制制度案を了承しました。60年超の運転ができる法整備をねらう推進官庁の経産省を後押しする規制委の姿勢は大きな問題です。

 ことは岸田文雄首相が8月24日、政府のGX(グリーントランスフォーメーション)実行会議で、原発の再稼働、運転期間の延長、次世代炉の開発・建設などの検討を加速するよう指示したことがきっかけです。

 経産省は9月22日、指示を受けた検討を審議会で開始。規制委の山中伸介委員長は同28日の定例会合の議題を終えた後、「利用政策における対応の方針」を聞く必要があると、原発推進官庁の経産省資源エネルギー庁を呼ぶことを提案。10月5日に同省担当者の説明を聴取。同省が法整備を検討していることを明かし、山中委員長は同日の会見で、運転延長の動きを容認し、現行の原子炉等規制法にある「原則40年、最長60年」の規定が削除される可能性について言及しました。規制委の事務局の規制庁は11月2日、運転延長への対応方針のたたき台を出し、定例会合で議論してきました。

 この間、運転延長について経産省の審議会の議論は続いていました。同省が運転期間から新規制基準に基づく審査などによる停止期間を除いて60年超の運転が可能な仕組みをまとめたのは今月8日です。規制委の対応は先回りして議論した形です。

 国会でもこの間の規制委の姿勢が取り上げられ、日本共産党の笠井亮衆院議員は、原発を規制する側が推進する側の意向をくんで飛び込んでいく「規制の虜(とりこ)の再来」だと指摘しています。

 (「原発」取材班)

(「しんぶん赤旗」2022年12月22日より転載)