東京電力福島第1原発事故の賠償基準の目安となる「中間指針」を策定する文部科学省の原子力損害賠償紛争審査会(会長・内田貴東京大学名誉教授)は12月5日、「中間指針」見直しについて協議しました。内田会長は、この日で見直しの項目をすべて協議したとして「方向性は見えた」と述べ、12日の審査会で第5次追補の素案を示すよう事務局に指示しました。
先月末から審査会は、指針を上回る賠償額を認めた集団訴訟の判決などを分析した専門委員の最終報告書に基づいて、(1)過酷避難状況による精神的損害(2)故郷喪失・変容による精神的損害(3)相当量の線量地域に一定期間滞在したことによる健康不安に基礎を置く精神的損害(4)要介護者など精神的損害の増額(5)子どもや妊婦以外の自主的避難の賠償期間―の五つの項目を協議してきました。
この日は(4)と(5)について協議。要介護状態や身体・精神の障害があることのほか、それらの介護や乳幼児の世話を恒常的に行ったことなどに対し慰謝料を増額する方向で一致しました。また、(5)について福島市やいわき市など「自主的避難等対象区域」の子どもや妊婦以外の住民の賠償は、これまで2011年4月22日ごろまでが対象だったのを同年12月末までとするとしました。
一方、福島県原子力損害対策協議会などから自主的避難等対象区域以外の住民の損害について、地域の分断を生まないよう配慮してほしいとの要望などを受けて議論しましたが、区域外の拡大はしないとしました。
指針は11年8月に策定され、見直しは13年12月の第4次追補以来9年ぶり。今後、具体的な賠償額などを含め第5次追補として策定します。
(「しんぶん赤旗」2022年12月6日より転載)