金曜行動10年500回 声大きく
「官邸前に行きたいけど、徳島でもやらんの?」―。東京電力福島第1原発事故を教訓に、脱原発を掲げる首都圏反原発連合(反原連)の首相官邸前抗議が大きく盛り上がった2012年。徳島市で「金曜行動」を始めた手塚弘司さんと手塚茂美さん夫婦は、当時中学生だった娘のこの一言から背中を押されました。
同年7月13日、「原発再稼働反対! 徳島有志の会」として徳島駅に立ちました。家族3人のほかに10人が参加しました。それから10年。コロナ感染予防のための一時中断を除き、正月やお盆でも雨が降っても徳島駅に立ち続け、11月25日500回目の行動を総勢40人でにぎやかにアピールしました。
思いが重なって
会員名簿もなく、総会や会議もせずに、「原発反対」の一点で金曜午後6時に集まり、思いをスピーチして散会する、ゆるやかな行動です。それでも、「毎回のように続けて参加する人たちの思いが重なってこの10年間続ける原動力になった」と弘司さんは語ります。
「未来の子どもたちのために危険な原発をなくそう」とのパネルを持った徳島市に住む尾華優博さん。現役だったころ国民平和大行進に参加するなど、放射能は人間をむしばむものだと知っていました。「福島の原発事故で故郷を離れ避難生活をしているのを見て、いつ自分たちの身近に起きるかわからないと感じました。手塚さんらの行動を知り、8月には参加しましたね」と振り返ります。あれから10年。「いまは、3人に増えた孫たちのためと思って参加しています。伊方原発で何かあれば放射能が飛んできますから」と話します。
教壇降り街頭に
「教壇を降りて街頭に立つ、ですね」。こう自己紹介するのは、神戸大学名誉教授の横山良さんです。「安倍政治を許さない3日行動や19日行動にも参加していますが、週1回の金曜行動が声を出す機会が多い」と意気軒高です。
いちばん訴えたいことは―。
「原子力産業のきたなさです。人の命よりもうけを優先し、“少々危ないことでもいいじゃないか”という姿勢が許せない。岸田首相の古い原発を再稼働させる動きは、エネルギー供給に苦しくても、原発をなくす方向で頑張っているドイツに比べてもひどい」
安全がいちばん
この日、飛び入りで初めて参加した市民もいました。会社員の畑中伸俊さんです。「原発はエネルギーとして時代遅れで、いらんさ。廃棄物利権とか利権の塊だと思う。電気は安全がいちばん」と話します。
宣伝の終わりには、「365歩のマーチ」の替え歌「原発反対のマーチ」が流れます。
♪原発は危険だから 日本中から無くすんだよ 1日一基 3日で三基…
声の主は、元音楽教諭の佐藤秀彦さんです。弘司さんは「佐藤さんは2年前に亡くなりましたが、その声と歌声を聞くと、金曜行動はやめられません」と話します。茂美さんも、「500回で喜んでいられない。早く行動をしなくてもいいようにしなくてはいけない」と力を込めます。
501回目の2日も、徳島駅前で「伊方原発再稼働反対」「さようなら戦争 さようなら原発」の声を響かせました。
(阿部活士)
過酷事故 強い懸念
愛媛・伊方町に立地する伊方原発は、瀬戸内海沿岸にあります。北に日本最大級の断層系である中央構造線、南に、活発で大規模な地震発生源の南海トラフが走っています。地震国日本で、巨大地震に襲われる可能性の高い原発です。
伊方原発が地震に耐えられる揺れの強さは、最大加速度650ガルまで。愛媛県の想定によれば、南海トラフ巨大地震が起きた場合、伊方町は震度7の地震に襲われ、最大加速度1500ガル程度以上です。伊方原発の過酷事故が強く懸念されています。
(「しんぶん赤旗」2022年12月5日より転載)