晴男 岸田政権が「原則40年、最長60年」という現行の原発の運転期間のルールを変えようとしている。
60年超が可能に
秋平 60年を超えて運転できる案を経済産業省が今月、同省の審議会で提示したそうだね。
晴男 案は三つだ。現行ルールを維持する案と、運転期間の上限を設けない案、再稼働の前提となる原子力規制委員会の審査などで停止した期間を運転期間から除外する案だ。後者の2案は60年以上の運転が可能だ。
秋平 しかし、現行ルールは、東京電力福島第1原発事故の教訓を踏まえたものじゃないか。
晴男 そう。事故後に改定された原子炉等規制法(炉規法)で、原発の運転期間は運転開始から原則40年とされ、規制委が認可すれば1回に限り最長20年の延長ができることになった。
秋平 そもそも老朽化した原発の原子炉は、中性子を浴び続けたことで粘り強さを失ってもろくなり、配管や機器は腐食や疲労で劣化するよ。
晴男 事故の危険性が増すことになる。当時、野田首相が「経年劣化等によりその安全上のリスクが増大する」「リスクを低減するため」に運転期間を制限したと答弁した。運転制限は安全規制の問題だ。
秋平 停止期間を除外する案で、運転期間に含めない例に審査期間や行政命令、原発の差し止め訴訟の仮処分命令による停止期間が挙がっている。北海道泊原発は9年以上審査しているけど、その分を追加延長できるというわけだ。
事故の教訓放棄
晴男 審議会委員で脱原発を掲げるNPO法人の事務局長が「延長することは事故の教訓の放棄に他ならない」と批判したが、その通りだ。
秋平 この問題は岸田首相が8月に打ち出した原発推進方針の一つで、年末に具体的な結論を出すよう指示した。経産省は炉規法の「原則40年、最長60年」の規定を変えることも含め、「延長ありき」だ。延長を求めていた経済界や電力会社は歓迎している。
晴男 規制委も経産省の動きを容認し、60年超の運転が可能な審査制度を検討している。
秋平 市民団体が現行の規定を削除するなと署名運動をしている。世論を盛り上げないと。
〔2022・11・19(土)〕
(「しんぶん赤旗」2022年11月19日より転載)